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製造業に学ぶ建設業のムダ削減術

 これまで、日本の建設市場に海外勢が参入しようと何度も試みてきたが、なかなか成功していない。ましてやIT企業のグーグルが日本の建設市場に参入できるのかを疑問視し、「まずはお手並み拝見」と、楽観視する向きも多いだろう。

 しかし、油断はできない。建設業ではこれまで製造業などに比べて非効率的なところがあっても「大量生産の製造業と、一品生産の建設業は事情が違う」というような言い訳が許されてきた面がある。

 もし、グーグルが従来の常識にとらわれず、「標準化」を軸にムダを徹底的に排除する製造業的なアプローチで建設業に参入してきたとき、既存の建設手法はコスト、工期で太刀打ちできるのだろうか。

 自動車産業で世界をリードするトヨタ自動車はかつて、「乾いたぞうきんを絞る」と言われるほどの無駄の削減に取り組み、現在の地位を築いた。有名な「トヨタ生産方式」を体系化した同社の元副社長、大野耐一氏は製造業における7つの無駄として、

1.作りすぎのムダ
2.手待ちのムダ
3.運搬のムダ
4.在庫のムダ
5.加工のムダ
6.動作のムダ
7.不良を作るムダ

を挙げた。これらは建設業でも当てはまることが多い。さらに建設業には3つのムダ、すなわち

8.お客様の要求に見合わない最終製品(固定資産)を提供するムダ
9.活用されない知見のムダ
10.チームワークの欠如のムダ

があると指摘する声もある。

 製造業がここ20年ほど、生産性を向上させてきたのは、作業内容の分解、プレハブ化やモジュール化の導入、統計的管理手法の適用、ムダを省いた設計による作業効率向上、そして3Dモデルやシミュレーション、フィードバックの適用といった要因が挙げられる。

 製造業のように大量生産する業界と、建設業のように一品生産を行う業界では話が違うと指摘する声もあるだろう。しかし、製造業も最初の製品を作るまでの開発プロセスは、一品生産を行うのと同じだ。

 自動車業界では、新車開発のために以前は試作車を何台も作っては衝突実験を繰り返すという手間とコストがかかることを行っていたが、最近は3Dモデルによりコンピューターシミュレーションを多用するワークフローを採用することで、開発期間を大幅に縮めた。

 また、試作品を作る方法も、従来の手作業から3Dプリンターやレーザーカッター、CNCルーターなどで自動化を図っている。

 海外の企業も含めた3次元CADのデータをやりとりして、国際的な分業を実現するワークフローも整えている。つまり、建設業で言えば「BIM3.0」のフェーズを既に実現し、世界市場で競争相手と渡り合っているのだ。

 もし、グーグルがこれまで建設業が見逃してきた設計や施工のムダ削減をターゲットにして、国際的な建設ビジネスを新たに構築しようとしているならば、既存のワークフローや分業体制にあぐらをかいている建設業にとって大きな脅威になりそうだ。