精細な日本の製図ノウハウを世界製品に

 日本の建設業界で使われる詳細図や施工図は、細部まで書き込まれていて、海外の図面よりずっと精細だと言われる。例えば、下の図面はほぼ同じ縮尺で書かれた日本と海外の図面の例だが、細かさの度合いが違うことが分かる。これはBIMソフトに求められる性能にも当てはまる。日本の設計者は外国製のBIMソフトに対して、より高度な図面作成機能を求めている。

同程度の縮尺の図面で比較すると、日本の図面(左)は海外の図面(右)に比べてずっと細かい(資料:グラフィソフトジャパン)
同程度の縮尺の図面で比較すると、日本の図面(左)は海外の図面(右)に比べてずっと細かい(資料:グラフィソフトジャパン)

 日本の設計者のBIMソフトに対する機能追加や改善などの要求に応えることは、海外のソフトベンダーであるグラフィソフトとっても利益につながるようだ。例えば、ArchiCADの「通り芯」の機能は、当初、日本の設計者のためだけに搭載されていたが、海外の設計者の間でも「便利だ」ということになり、今では各国のバージョンに標準搭載されている。

 9月25日に発売した最新版の「ArchiCAD 17」には、日本のBIMユーザーの要望に応えて、様々な詳細設計機能が搭載された。その1つは、床と壁、天井と壁が交差する部分などでの“勝ち負け”を自動的に調整する機能だ。

 つまり、床材と壁材など2つの部材が交差するときにどちらが他方を貫くかという判断を自動的に行い、納まりを調整するというものだ。

 これを実現するため、各部材には999段階の優先度を設定しておき、数字が大きい方が自動的に“勝つ”ように接続されるようにした。

以前のバージョンのArchiCAD(左)では部材同士が交差していたが、ArchiCAD 17(右)では優先度ベースの接続により“勝ち負け”が自動調整される(右)(資料:グラフィソフトジャパン)
以前のバージョンのArchiCAD(左)では部材同士が交差していたが、ArchiCAD 17(右)では優先度ベースの接続により“勝ち負け”が自動調整される(右)(資料:グラフィソフトジャパン)

優先度ベースの接続により細部をモデリングした例(資料:グラフィソフトジャパン)
優先度ベースの接続により細部をモデリングした例(資料:グラフィソフトジャパン)

 もう1つの特徴は、「柱」や「梁」といった部材の機能別属性ほか、「ビルディングマテリアル」という材料別の属性が追加されたことだ。例えば、床と梁が同じ「コンクリート」という属性なら、交差部分は自動的に「包絡」してつながり、実際の施工と同じように部材接合を表現できるようになった。

 優先度ベースの接続と、ビルディングマテリアルの機能を使うことで躯体の増し打ちなども納まりを正確に表現でき、数量計算も正確に行えるようになる。

新属性「ビルディングマテリアル」によって、同じ材料がつながる部分は自動的に包絡処理が行われる(資料:グラフィソフトジャパン)
新属性「ビルディングマテリアル」によって、同じ材料がつながる部分は自動的に包絡処理が行われる(資料:グラフィソフトジャパン)

 このほか、「壁芯」「躯体中心」「躯体外側」など、どの面を基準に設計するかを指定する「基準線ベースの入力機能」や、壁や柱などが階高に追随する「要素の上部フロアリンク」、「見上げ・見下げ」の図面化、マルチコアCPUを有効利用してレンダリングのバックグラウンド処理を行う機能も新たに搭載された。

 こうした新機能により、浴室部分だけ床を下げたモデリングなど、日本の設計者が求める詳細図の作成が、ArchiCAD 17ではずっと効率的に行えるようになったのだ。

床が下がった部分のモデリング例(資料:グラフィソフトジャパン)
床が下がった部分のモデリング例(資料:グラフィソフトジャパン)