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本物の建物と見まがう足場カバー、6時間で競うBIMコンペ、そしてグーグルが関与していると噂される謎の台船―――。米国の建設業界にはユニークな話題にこと欠かない。最近、ラスベガスとサンフランシスコで筆者が見てきた現場を紹介しよう。

建築のプロもだまされたオシャレ足場

 2013年12月3日~5日、米国ラスベガスで開催された「Autodesk University 2013」(以下、AU2013)の会場となった「ベネチアンホテル」は、カジノやショッピングセンター、ショーなどを行う劇場を併設した一大複合施設だ。

 建物の中にはベネチアそっくりの運河が作られており、本物のゴンドラも運行されている。ここに来た観光客は、日常を離れた空間に浸りながらバカンスを楽しめる。

ベネチアンホテルの内部に作られた運河(写真:家入龍太)
ベネチアンホテルの内部に作られた運河(写真:家入龍太)

筆者が訪れたベネチアンホテルの夜景。特に変わった様子はない(写真:家入龍太)
筆者が訪れたベネチアンホテルの夜景。特に変わった様子はない(写真:家入龍太)

 筆者がこのホテルに滞在している時、建物には特に変わりはないようだったが、実は建物上部で増築工事が行われている真っ最中だったのだ。

 ショッピングセンターの部分は、上部と下部に分かれているように見える。ふと、この建物を見上げた時、壁面が風でかすかに波打っているのに気がついた。建物の上部と思っていたところは、ナント、足場カバーだったのだ。

昼間のホテル。一見しただけでは工事中とはとても思えない(写真:家入龍太)
昼間のホテル。一見しただけでは工事中とはとても思えない(写真:家入龍太)

風でかすかに波打つ壁面をよく見ると、足場カバーだった(写真:家入龍太)
風でかすかに波打つ壁面をよく見ると、足場カバーだった(写真:家入龍太)

カバーに印刷された建物のファサード。つなぎ目がわからないようにラインもピシッと通っている(写真:家入龍太)
カバーに印刷された建物のファサード。つなぎ目がわからないようにラインもピシッと通っている(写真:家入龍太)

 きっと、大判インクジェットプリンターなどで、足場カバーに建物のファサードそっくりのテクスチャーをプリントアウトして、丁寧に設置したのだろう。

 建物のラインもぴったりそろい、完ぺきな出来栄えになっているので、ニセモノ感がほとんど感じらない。筆者もそれまでこの“偽装建物”にまんまとだまされてしまっていた。プロの建築士である知人もこの前を何度も通ったそうだが、増築工事には全く気がつかなかったという。

 足場の本体だけでなく、外部のカバーもBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)で設計し、完成後の建物ファサードのテクスチャーを張り付け、展開図をつくることでこうしたおしゃれな足場カバーも簡単に作れるのではないだろうか。施工段階でのBIM活用の一種として考えられそうだ。

 また、巨大な壁面を生かした広告媒体として活用すれば、仮設材を“収入源”として活用できるかもしれない。

 ベネチアンホテルはラスベガスの中心街であるストリップ通りに面しており、真向かいのホテル「トレジャーアイランド」では、通りに面して海賊船ショーが行われる。ここに集まった観光客に、日常を思い起こさせる工事現場の姿を見せたくないという配慮だろうか。

 一流のエンターテインメントを提供するラスベガスならではの「オ・モ・テ・ナ・シ」の精神が、工事現場の足場カバーにも息づいているような気がした。

道行く人たちは、この上で工事が行われていることには全く気がついていないようだった(写真:家入龍太)
道行く人たちは、この上で工事が行われていることには全く気がついていないようだった(写真:家入龍太)

グーグルマップスで見た現場。写真にはタワークレーンが写っており、工事現場だということがわかる(資料:Google Maps)
グーグルマップスで見た現場。写真にはタワークレーンが写っており、工事現場だということがわかる(資料:Google Maps)