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脇役の施工管理こそ、BIMで自動化を

 建設業界でも、セキュリティー管理などでは、個人の意識やモラルによらず、情報漏えいを防ぐ仕組みができている。例えば、USBメモリーの使用禁止や添付ファイルの自動暗号化などだ。

 しかし、本来、最も重要な設計や施工段階でのミスを防ぐ手段については、いまだに個人の力量や裁量に任されているところが多く、ミスを防ぐ標準的な仕組みの構築・普及にまでは至っていない。

 今回、問題となったスリーブは、建設プロジェクトの中では脇役的な存在で、元請け会社にとっても重点管理の対象になっていないのではないかと筆者は推測している。建物の屋台骨となる主構造部分や鉄筋量の確認、コンクリート打設の施工管理の方がよほど重要なのは言うまでもない。

 限られたスタッフでスピーディーな施工が求められる現在の施工現場では、スリーブやアンカーボルトといった脇役的なものの管理こそ、BIMで自動化する必要があるだろう。これらの脇役的なものの管理は、技術者がいちいち注意を払わなくても自動的に行えるような仕組みをつくることが、手戻り工事という施工ミスを防ぐことにつながるからだ。

 竹中工務店では、BIMモデル上の干渉を完全になくし、スリーブはもちろん、小さな吊り金具や取り付け金具などを含めて施工が物理的に可能な状態までBIMモデルの完成度を高めることを「バーチャル竣工」と呼んでいる。技術的には既に膨大な数の脇役的な部材をBIMで効率的に管理できるようになっているのだ。

小さな部材を含めて施工可能なレベルまでBIMモデルの完成度を高める「バーチャル竣工」(資料:竹中工務店)
小さな部材を含めて施工可能なレベルまでBIMモデルの完成度を高める「バーチャル竣工」(資料:竹中工務店)

 今回のスリーブ入れ忘れ事件は、これまでの施工現場で当たり前のように思われてきた手戻り工事が、あまりの影響の大きさゆえに顕在化したにすぎないだろう。この事件を期に、手戻り工事を防ぎ、生産性向上を実現する仕組みづくりを本格的に検討するべき時期に来ているのではないだろうか。そして、そこではBIMの活用は必須といえるだろう。

家入龍太(いえいり・りょうた)
1985年、京都大学大学院を修了し日本鋼管(現・JFE)入社。1989年、日経BP社に入社。日経コンストラクション副編集長やケンプラッツ初代編集長などを務め、2006年、ケンプラッツ上にブログサイト「イエイリ建設ITラボ」を開設。2010年、フリーランスの建設ITジャーナリストに。IT活用による建設産業の成長戦略を追求している。
家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/ツイッターやfacebookでも発言している。