出来形BIMの精度指標「LOA」を提唱するUSIBD

 セミナーも点群データとBIM、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の高度な融合を目指す内容のものが目立った。

 米国建築文書化協会(USIBD)は、出来形BIMモデルや点群データの正確さ(Accuracy)を表現する手段として、LOA(Level Of Accuracy)という新指標を提唱した。

LOAについて講演するUSIBDのジョン・ルッソ(John Russo)会長(写真:家入龍太)
LOAについて講演するUSIBDのジョン・ルッソ(John Russo)会長(写真:家入龍太)

 LOAとは、現物上の各点と、3Dモデルや点群データ上の各点の位置を比較し、その誤差がどれくらいなのかを「LOA10」から「LOA50」の数値で表す指標だ。数値が高くなる方が、精度が高いことを意味する。

 例えば、「LOA30」は、建物のある点に対応するBIMモデル上の点の位置をいくつもの点について調べたとき、両者の誤差が「5mm~15mmの間に95%以上が納まる精度」のものを指す。標準偏差の考え方を利用した指標だ。

各LOAに対応する誤差上限値(Upper Range)と下限値(Upper Range)。誤差がこの範囲に95%以上入っていること(資料:USIBD)
各LOAに対応する誤差上限値(Upper Range)と下限値(Upper Range)。誤差がこの範囲に95%以上入っていること(資料:USIBD)

 建物全体が同じLOAである必要はなく、サッシやドア枠などの取り付け部は「LOA40」で、壁の外面は「LOD20」で、といったメリハリをつけた使い分けもできる。

 BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の世界では、建物のBIMモデルの詳細度を表すのに、「LOD(Level Of Detailまたは Development)」という指標が使われている。LOD100レベルは概念設計、350は施工図、500は竣工モデル、といった具合だ。

 「3桁のLODと混同しないように、LOAでは2桁の数字で出来形モデルの正確さを表すことにした」とルッソ会長は語る。

 また、点の間隔が開いていると、その間に突起があった場合にはBIMモデルに表現されない場合もある。

赤い点の間隔が3Dモデルや点群の解像度を表す(資料:USIBD)
赤い点の間隔が3Dモデルや点群の解像度を表す(資料:USIBD)

 そこで、LOAとともに「解像度(Resolution)」という指標を併用して、BIMモデルの精密さを表現しようと、USIBDは提唱している。

 既存の建物を3Dレーザースキャナーなどで計測した点群データなどを基に、出来形(実物の建物の形)のBIMソフトで3Dモデルを作ることがある。

 そのとき柱や壁がやや傾いていても垂直にモデリングしたり、窓枠が直角でなくても直角にモデリングしたりすることが多いのではないだろうか。

 現存しない図面を再現するという目的なら、こうした方法もありだが、建物の出来形BIMモデルを作る上では、やはり傾いた柱や壁はそのままモデル化した方が正確なのではないだろうか。

 設計図があっても、実際には施工誤差によって傾いた柱や壁に合わせて増築やリフォームを行うことになる。つまり、施工段階では最終的には現場合わせの方が優先するのだ。

配管のモデリングの例。上はBIMパーツ的に直線で表しているが、実際の配管は曲がっていたりするので点群データとは一致しない(資料:USIBD)
配管のモデリングの例。上はBIMパーツ的に直線で表しているが、実際の配管は曲がっていたりするので点群データとは一致しない(資料:USIBD)

室内を3Dレーザースキャナーで計測した点群データを忠実に図面化すると、施工誤差が出てくる場合もある(資料:USIBD)
室内を3Dレーザースキャナーで計測した点群データを忠実に図面化すると、施工誤差が出てくる場合もある(資料:USIBD)

 例えば、基礎のボルト位置を3Dレーザースキャナーで計測し、ボルトの位置や傾きなどをできるだけ現物と忠実にBIMモデル化しておく。するとその基礎に合う鉄骨基部は、データ上で仮想的に“現場合わせ”しながら工場で製作できる。施工誤差もそのまま表現した出来形BIMモデルの方が施工上、役に立つのは言うまでもない。

現場で施工した基礎のボルト位置(資料:USIBD)
現場で施工した基礎のボルト位置(資料:USIBD)

作成した出来形BIMモデル(資料:USIBD)
作成した出来形BIMモデル(資料:USIBD)