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 震災後の能登で、目に焼き付いた被害の光景がある。輪島市中心部・朝市通りの裏手で、朽ち果てるように崩壊していた古い木造建物がそれだ。

 建物自体は地震で壊れても不思議はない古い土壁造の2階建てだった。その中で目に止まったのは、崩壊した建物の上に散らばっていた耐震補強金物だ。柱と梁をつないでいたL字形の耐震補強金物が、あるものは引き抜け、あるものは引きちぎられていた。崩壊した昔ながらの建物と、過剰なまでに取り付けられた金物のアンバランスなコントラストが、強い印象を残した。

 現地を見て回り、能登半島地震で大きな被害を受けた建物は、(1)埋め立て地など地盤の悪い場所に建っている、(2)老朽化による建物の劣化が進んでいる、(3)開口部が広いなど壁量のバランスが悪い、(4)接合部の補強をしっかり行っていない、の3つ以上の項目に当てはまるものがほとんどだと感じた。上記で触れた建物の持ち主は、接合部の補強に力を入れる一方で、ほかの弱点には手を付けていなかった。そもそものバランスが悪い建物で、耐震補強金物ばかりを取り付けても地震をしのぐのは難しい。

 このメールの読者は建築や土木のプロがほとんどなので、「当たり前のことをいまさら」と感じる人が多いかもしれない。しかし、当たり前のことが届いていないのが現実で、だから地震のたびに同じような悲劇を目にすることになる。

 能登半島地震の全壊戸数は4月3日時点で300を超え、安心できる居所を失った数多くの人々が避難所で暮らす。様々な理由で備えられない人もいるだろうが、地震に備えるための知識が欠けていたために悲劇に遭う人もいる。プロの“当たり前”の知識が人を救うことが必ずある。まずは自分の家族や両親、そして知人たちに命と財産を守るためのアドバイスを、一言でいいから伝えてあげてください。

--------------------------------- 3月22日発行の「日経ホームビルダー」4月号の特集記事「即効!金物再入門」では、現場で犯しがちな取り付けミスなどを紹介しながら、住宅の骨組みを支える接合金物使いの基礎知識をまとめている。今回の地震では、地盤、壁、接合部、腐朽といった弱点を抱える木造建物が狙い打ちされた。これら被害の詳細と、そこから学ぶべき教訓については5月号で報じる予定だ。家づくりにかかわる技術者もいま一度、耐震の基礎を見直すべきだろう。