東京都知事選挙で惨敗した黒川紀章氏が、都知事選への出馬を表明したのは2月21日だった。同日の夜、日経アーキテクチュアのニュース記事を担当するデスクから「黒川紀章が東京都知事選挙に出馬するらしいが、本当か」という電話を受けたことが、同氏の選挙戦を追いかけるきっかけとなった。
デマではないかと思いつつも、黒川紀章建築都市設計事務所の電話番号を確認するために、半信半疑の思いで同事務所のウェブサイトを立ち上げた。すると、トップページに小さく「都知事選について」と表示されている。一気に高まってきた興奮を抑えながらその小さな表示をクリックしてみると、箇条書きされた「15の公約」が画面に飛び出してきた。
![]() 都知事選挙への出馬を表明したウェブサイトの画像 ※画像をクリックすると、別ウィンドウに大きい画面を表示します |
公約の最初には、「石原(慎太郎)都知事が立候補を辞退しない場合には、都知事選に立候補する」とあった。黒川氏らしい扇動的な表現だ。そのほかに、「無給、官舎、公用車は使用しない」といった、大衆迎合とも解釈できそうな公約も並べていた。黒川氏の意図を確認するために事務所に電話してみると、「本人は不在で、今日は会見を開く予定はない」との回答だった。突然の出馬表明は真剣なものなのか――。この段階では全く見当がつかなかった。
数多くのメディアからの取材要請などを受けた黒川氏は2月22日、東京都庁で記者会見を開催。会見では、「黒川紀章が立候補宣言したからといって、石原知事は『おれは降りる』と言うような人ではない。思い切りがんばろうと思う」と語り、真剣に都知事の座を争う姿勢を示した。会見中には冗談とも受け取れそうな発言も散見されたものの、都知事選に出る意欲は満々だと感じ取れた。
この日の会見で黒川氏が最も強調したのは、15の公約に盛り込んだ首都機能の移転推進や東京オリンピック招致の中止だ。例えば、東京オリンピック招致の中止について、黒川氏は次のように力説した。「オリンピックを通じて空き地となっている湾岸開発を目指しているようだが、泣くのは東京湾の生態系だ。私は現状の埋立地を公園にして、開発しない」。