PR

 建築、土木、不動産の3分野を眺めて、どうしてこうも違うのだろうと思うことがある。市場環境と人材流動性だ。

 天候に例えれば、不動産は好天続き。市場の拡大に人材の供給が追いつかず、他分野からも人が流入している。転職支援を手がけるリクルートエージェントのアドバイザーは「1人に対して3社くらいから求人が来ている状況だ」と話していた。人手不足は賃金の上昇につながる。不動産分野の年収水準は、全業種の中でもトップクラスの高さだそうだ。

 建築分野は、曇り空にときどき晴れ間が見えているといったところだろうか。都心部における不動産開発の活況や設備投資の拡大を受けて、施工管理の人材が不足している。建築の知識は建物評価で生かされ、設備のノウハウは建物管理で通用することから、不動産分野に転じる人もいる。建築の人材は建築分野の中だけで動くのではなく、外へも行ける環境だ。

 これに対して土木分野は長雨続きだ。公共投資額の減少によって既存のビジネスモデルが揺らいでいる。分野内の仕事が少なくなり、ほかの分野からの求人もほとんどない。同じ建設分野でありながら、官(土木)と民(建築)の垣根は高く、土木分野から建築・不動産分野に人が動いたという話は、あまり聞かない。

 これまで、日経コンストラクション(土木)、日経アーキテクチュア(建築)、日経不動産マーケット情報と3分野の記者をしてきた経験から、土木分野には実直な技術者が多いという印象をもっている。なかでも現場技術者は工程、原価、品質の管理ができて、書類作成業務にも慣れている。安全管理の知識も有しているし、何よりプロジェクトを遂行しようという意識が根底にある。

 そんな人たちが活躍の場をなくしていくのは、なんとも残念だ。そこで提案だが、人手不足で悩む不動産分野は、土木分野にも門戸を開いてはどうだろうか。土木技術者が社会資本づくりに傾けた情熱を、今度は住宅やオフィスビルといった資産の価値向上に生かしてもらうのだ。不動産分野のアセットマネジャーやプロパティマネジャーとして、力を発揮できる素養が土木技術者にはあると思う。

 建築分野の施工管理にも、土木技術者の経験は生かせるだろう。基づく法律や基準は異なるものの、鉄筋やコンクリートなどを使って物をつくる点は同じ。両分野の間に立ちはだかる壁は高いと言われてきたが、絶対的な障害があるわけではない。人の心の中にある「建築と土木は別」という固定観念やライバル意識が、見えない壁をつくっていたのではないか。矢作建設工業は4月1日付で、建築・土木の本部制を廃止する機構改革を実施した。土木系社員の建築分野への配置転換を行う考えもあっての取り組みだ。