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駄目になったら放っておくのも選択肢

 現在の東京は、交通渋滞や遠距離通勤、社会経済的な格差など多くの都市問題を抱えている。少子高齢化や環境意識の高まりなど都市を取り巻く環境も変化し、機能の再構築が迫られている。ディスカッションでは、地域間格差の問題が話題になった。

 竹中氏は、投資効率の高い東京の都市整備を通じて活力を回復させることが、日本全体の発展に寄与するとの持論を展開した。新たな地方分権一括法を制定しようとする動きを挙げ、国の仕事か地方の仕事を仕分けるなかで「東京をどのように扱うかが大問題になる」と指摘。米国のワシントンDCのように、「東京を別の法体系に持っていく方が長期的にはいいと思う。実力に見合っているし、特別な発想ができるチャンスもある」と述べた。

慶應義塾大学教授の竹中平蔵氏
慶應義塾大学教授の竹中平蔵氏

 さらに竹中氏は、東京の問題として移動しにくい点を挙げた。「思いがけず霞が関の真ん中で仕事をすることになって、東京ってこんなになっているのか、と驚くことがあった。東京の中心部は車が便利だという点だ。車で移動する方が地下鉄よりも明らかに早い。霞が関は本当に便利で、分単位で時間を読める。こんな大都市はあまりないだろう。そのしわ寄せが、郊外にいっているような気がする。都心回帰の流れは相当、大きな流れになると思う」とした。

 これに対し、隈氏は「東京は都心部の魅力が低いのが問題だ。一斉に郊外に帰ってしまう。これが、東京の均一なつまらなさを生み出している」と述べた。米倉氏は、「都心の真ん中にビルを建ててまわりに住む構造は工業化社会の名残で、知識社会の構造ではない」と指摘。「1時間も通勤したら、すべてのエネルギーがそがれてしまう。東京はつまらない。子供の遊び場が多く、知的な会話を楽しむ場がない」と、ユーモアを交えて語った。

 都市政策に人口減少が与えるインパクトは無視できない。竹中氏は、「国土政策の概念が根本的に変わる。人口をある程度集約するために助成金を出すといった、いまとは違う発想になるだろう。その際に郊外のあり方をどう考えるかが、新しい課題になる」と指摘した。隈氏は、米国・ニューヨークの郊外の例を挙げ、「アメリカの知恵は、郊外で駄目になりかけたものは放置しておくことだ。ちょっと汚くても構わないというアーチストなどが住み始めると、新しい循環が生まれる」と述べた。「日本は、駄目にすることをものすごく怖がる。これは都市の護送船団だ。駄目なものをそのままの状態でキープしようとすれば、お金がかかり、ほかの事にしわ寄せが行く」と語った。

 都心の活性化の処方せんとして、竹中氏は、東京の歴史を一例に挙げた。「東京は歴史のリソースをほとんど開発していない。真面目に歴史を発掘すれば、面白い仕掛けができるのではないか」と指摘。隈氏は、中国・上海の新天地の開発の事例を引き合いに出しながら、「歴史はリソースであると同時にユースフルなもの。守っていくということも重要だが、どう使うかという立場も大事になってくる」と応じた。

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