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都市競争力を高めるための行政の役割とは

 東京を再構築するための行政の役割とは何か。竹中氏は、米国のシリコンバレーの成功を挙げ、「政府はシリコンバレーを育成するために特別に何かをしたわけではない。税制や規制緩和といった枠組みをつくっただけだ。政府が具体的なことを言ったらいけない。一歩下がった見方が必要だ」と述べた。

 米倉氏は「民間企業が面白いと思ったことに乗ってくる形でないと、東京は再生しないのではないか」と述べた。「六本木ヒルズや東京ミッドタウンができた。お互いに関係性はないし、計画性もない。それがいけないとして批判し、都市計画でゾーン化しようとする考え方はもう効かないだろう。互いが競い合うことで関係性をつくっていく。それが、集積につながる。計画性ではなくて創発性といった観点が大事になる」と語った。

建築家の隈研吾氏
建築家の隈研吾氏

 隈氏は、「行政が、ルールのような一般則でやっている限りは駄目だというのは世界の常識。容積率や建ぺい率で一律な規制で都市が自動的にできるものではない」と指摘した。自らの経験に触れ、「この間、北京の都市計画長に呼ばれた。容積率や建ぺい率といった面で支障があるのかと思ったのだが、お前のデザインは単調すぎると言われた。中国もそういう時代になっている。それに対し、日本の行政はデザインについては言ってはいけないといった姿勢で、ルールの話しかしない。これはもったいない」と語った。

 米倉氏は、裁量行政の問題点も指摘した。竹中氏は、ルールの公表を原則として、事後チェックに重点をシフトしていくことの必要性を説いた。「世の中が進歩するなかでは、個別に判断する方が現実的だ。日本の法体系が、経済の足を引っ張る可能性がある」。

 ディスカッションの締めくくりに、竹中氏は郵政民営化についても触れた。「最近の大型開発は、六本木ヒルズを除いてほとんどが何かの跡地。リソースがどれぐらい出てくるかを考えると、郵政は可能性がある。なぜ東京駅前に立派なものを有効利用しないで置いているかといえば、郵政が法律で事業を縛られていたからだ。都市開発事業や不動産事業を手がけてはいけなかった。民営化によってできるようになる。東京を含めて都市を良くするきっかけにならないかという期待がある」と述べた。隈氏は「郵便局は世界中で狙われている。郵便局ができたころの建物のグレードは高い。郵便局をホテルにした例は世界でも多い」と応じ、会場の笑いを誘った。

 ディスカッションでの一連の議論は、“退屈でつまらない東京”からの脱却を指向する主張だといえる。東京にイノベーション機能を求め、都市機能をいっそう充実させることで先端を目指そうという主張だ。もちろん成熟した都市として生活の質の向上を優先すべきだといった異論もあるだろう。問題は、こうした選択肢について国家レベルでのビジョンが示されていないことだ。いまこそ東京のあり方を議論し、政策を明確にする時期が来ている。

 都市と経済活動は無縁ではあり得ない。大都市の功罪は様々だが、その競争力が、国家経済の将来を左右する時代になっているのは現実だ。こうしたなか、都市計画や建築、土木の専門家が果たすべき役割は大きい。竹中氏は、一点を倒せばドミノ的に効果が波及する“センターピン”の政策の重要性を説いた。都市のあり方を大きく変えるセンターピンは何か、新しい都市のあり方について自由かつ挑戦的な発想が求められている。