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 設計者はどんな建築トラブルに関心が高いか?

 …という問いに回答する前に、「法務」欄についてちょっと説明を。日経アーキテクチュアには、1975年の試作版からずっと続いている「法務」欄がある。「法規」「判例情報」など名前が多少変わりこそすれ、弁護士の方々が注目の判例や法改正について解説するという構成に変わりはない。

 現在、その「法務」欄をまとめた書籍を編集中だ。1997~2006年の10年間に掲載した記事から、読者を対象とするアンケート調査の結果で反響が大きかったものをピックアップ。さらにそのなかから、執筆者である弁護士の皆さんに、特に重要と考えられる判例を選び出してもらおうとしている。

 さて、読者の反響が最も大きかった栄えあるベスト1は、「敷地境界線上へのコンクリート塀築造/隣家の反対があっても可能か」(1999年11月29日号)だった。賃貸マンションの建て主が、先代の建てた塀を除去し、隣地との境界線に合わせて新たに塀を築造しようとしたところ、隣地の所有者から反対された。工事費は全額負担すると言っても首を縦に振らない。はたして、隣地所有者の承諾なしに塀を築造することはできるのか――。
 1)隣地の境界線を越えず、2)自己所有地内に、3)工事費全額を自己負担で、4)通常の高さの塀を築造することは、民法上、問題ないというのが結論だ。もっとも隣地所有者ともめている状態では工事に支障を来す。かといって、気を遣ったつもりで塀を後退させて築造すると、塀と隣地との間の土地を時効取得で失いかねない。こうした「かゆいところに手が届く」解説が反響の大きさにつながったのだろうか。

 設計者は敷地関連のトラブルに関心が高いようで、2位も「境界線から50cm離せと隣家が要求/設計者は設計変更の責任を負うか」(2001年5月14日号)だった。

 以下、3位「誤解だらけの監理者の責任/過失に基づく損害が賠償責任を負う」(2005年3月21日号)、4位「素人が設計・施工を手がけた住宅建築に瑕疵」(同11月14日号)、5位「建築士事務所登録をしていない場合の設計料請求」(1999年9月20日号)と続く。全体を見回すと、監理者の責任が問われたケースや、発注者の無理難題が原因となったトラブルに関心が高いようだ。

 もちろん、アンケート調査の結果だけで判例の重要性が決まるわけではない。ということで、法務欄執筆者である弁護士の方々に、重要と考える判例を選び出してもらっている。さて、その結果は…。

 詳しくは9月発刊予定の書籍で明らかにするので、もう少々お待ちのほどを。