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 東京都内のぜんそく患者らが国や東京都,首都高速道路会社,自動車メーカーなどを相手に損害賠償を求めた東京大気汚染訴訟で,東京高等裁判所は6月22日,和解案を提示する。国などはすでに公害対策などの具体案を原告側に伝えており,和解がおおむね成立する見通しだ。

 例えば,都はぜんそく患者への医療費助成制度を提案。国は60億円,首都高速道路会社は5億円をそれぞれ都に拠出する。さらに,国や都などは,中央環状線や圏央道,外環道といった環状道路を整備して都心の交通量を分散するほか,幹線道路沿いに街路樹を植えたり,緑地帯を新設したりすることも示した。中央環状線の西新宿ジャンクションでは,高架橋の壁面緑化を施す。


高架橋の壁面緑化の完成イメージ。高架橋側面の約600m2と擁壁の約150m2を緑化する。大林組が2007年2月,1億6500万円で落札した。工期は360日間 (資料:首都高速道路会社)

 同訴訟の教訓は,道路を整備する際に今後,環境への影響を費用と効果の両面でどのように評価しておくかということだ。例えば,沿道の緑地帯の設置は公害対策として有効だが,用地を確保するために事業費の増額がどこまで許されるのか,問われる場面も出てくるに違いない。

 建設省(いまの国土交通省)は1997年度から,新規の道路事業の採択に費用便益分析を義務付け始めた。道路の整備による走行時間短縮などの効果を金額に置き換えて,事業費などと比較する。ところが,緑地帯の設置や窒素酸化物の削減といった環境への効果は金額に置き換えることが難しく,多くの費用便益分析では考慮していないのが実情だ。

 環境に対する市民の意識は高まっている。環境の保全や改善に要する費用対効果をもっと活発に議論すべき時期にきている。