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 「ついに、ここまでやるようになったか」。分譲マンション事業を展開するニチモが、マンションを販売する際に第三者の性能検査を導入すると聞いて、こう思った。わが家のマンションでも、売り主との間で「図面と建物が違う」というトラブルが過去にあり、こんな仕組みがあればいいと思っていたところだ。ニチモがこの制度を導入した背景には、2005年に起きた構造計算書の偽造事件がある。第三者による性能検査の導入によって、顧客の不安を解消したい考えだ。

 この種の第三者による評価ビジネスは、建築・土木の両分野で今後、ますます拡大するとみて間違いない。なぜなら建築・土木の分野は、(1)取引の規模(発注価格や売買価格)が大きい、(2)プレイヤーに対する不信感がある、(3)場合によっては命の危険がある――という条件がそろっているからだ。

 構造計算書の偽造事件を受けて、建築の世界では第三者のチェックが法律で定められた。一定規模以上の建築物について、第三者の専門家が構造を審査する構造計算適合性判定だ。法律で定められた第三者チェック以外にも、ニチモのような任意の取り組みがいくつか出てくるだろう。

 例えば100円程度の買い物で、いちいち第三者の評価を加えていたらビジネスは成立しない。対象が取引額の大きな構造物で、欠陥によっては生命の安全を脅かし、さらに偽造事件によって生産者への信頼が失われたために、新制度が設けられたのだと受け止めている。

 多数の投資家の資金を集める不動産投資の世界では、第三者のかかわりなくしてビジネスは成立しない。不動産取引におけるデューデリジェンスは、不動産を詳細に調査して価値やリスクを明らかにする業務だが、そこには第三者性が求められる。例えば、売り手自信が「この物件には欠陥がありません」「高い収益性が見込めます」と言っても、買い手は信用しない。

 個人が住宅を買うときに専門家が同行し、物件をチェックするサービスも珍しくなくなった。不動産を取得する際の鑑定評価に、セカンド・オピニオンを取り入れている会社もある。第三者が算出した価格の妥当性について、別の第三者に意見を求めることで、価格が適正であることを示すねらいだ。

 土木の世界でも、これから第三者ビジネスが広がってくるはずだ。日経コンストラクションは先日、「道路や港湾もREIT(不動産投資信託)の投資対象に」という記事を掲載した。そんな時代が来たら、建物よりもスケールの大きなデューデリジェンスが必要になる。

 談合、それも官も交えた談合事件が相次いだことも、土木分野への第三者ビジネスの導入を促すだろう。これまで談合を繰り返してきた発注者や建設会社は、社会の信用を失った。こうなると、入札を厳正に実行できる第三者の登場が待たれるのではないか。

 念のため付け加えておくが、第三者によるビジネスを制度化する傾向を、歓迎しているわけではない。第三者の介在によって書類が増えたり、時間がかかったり、どこかが非効率になることを覚悟しなければならないと思っている。