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 6月20日に施行された改正建築基準法の取材を続けている。施行から2週間が過ぎ、少しずつ実務上の課題が顕在化しつつあるようだ。7月2日には、新確認制度をかなり実直に運用する方針で対応を開始した横浜市に取材した。

 横浜市は受理前の事前審査を行わないスタンスで改正法施行に臨んだ。ホームページなどで公開したチェックリストを用い、小規模な戸建て住宅を除く建物(1号から3号物件)については予約制のぶっつけ本番で「受理時の審査」を行う。ここで必要な書類がそろい、図書に不整合がない場合のみ、申請を受理する。

 この結果、6月20日から7月1日までに10件の審査を実施。うち問題なく受理したのは、わずか1件にとどまった。審査課の担当職員は「必要な書類がそろっていないケースがほとんど。特に認定書の写しが添付されていないことが多い」と話す。

 これまでの建築確認制度では、建築法令と現実との“距離”を、良くも悪くも主事判断による運用や指導で埋めていた面がある。横浜市にはこれまで、認定書番号の記載で確認を下ろしていた慣例があったが、今回の改正でこれができなくなった。指導の位置付けだった項目が政令や告示に格上げされたことによって、厳格に運用せざるをえなくなった。ささいな一例だが、確認や検査の厳格化に伴い、この手の実務上の影響が数多くある。

 審査する側も悩んでいる。申請を門前払いすることが目的ではないからだ。建築審査課の課長は「耐震偽装事件のようなことを起こさないためにはやむをえないとは思うが、こちらとしても苦しい。せめて十分な周知期間がほしかった」とこぼす。

 では、この厳格化は不正防止に実効を上げるのか。我々がケンプラッツで行った改正建築基準法に関する緊急アンケートでは、回答者1058人のうち、「改正建築基準法で構造計算書の偽造を防げる」と回答したのは12%にとどまった。約半数の47%が「わからない」と判断を保留したものの、「偽造を防げない」と答えた実務者が39%と否定的な声が多かった。

 規制される立場の否定的な感情を割り引いても、これは実務者の肌感覚として軽視してはならないデータだろう。

 今回の法改正とそのやり方については、確認検査機関や自治体、中央官庁など、制度を推し進めるべき立場の人々からも、グチや恨み節を聞くことが圧倒的に多い。なぜこんな状況になっているのか。やはり異常だと感じる。

 現場の混乱はこれから本格的に顕在化するだろう。急な変化に伴う一時的な現象かもしれない。しかし、まじめに対応するほど負荷が大きくなる一方で、スッポリと抜け道があるとしたら……。もし今回の法改正が実務者の負担ばかりを増やして実効を伴わない新制度として定着するようなことになったら、それこそ何のための改正かわからない。