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 日経アーキテクチュア7月9日号の特集「されど、手すり」に連動して、ケンプラッツで階段の手すりに関するアンケートを行った。その結果、1)約7割の実務者が手すりの義務化を知っていて必ず設置している、2)個人住宅にまで義務付けるのは過剰、あるいは建物の用途によって内容を変えるべきとの回答もまた約7割ある――ことが明らかになった。これを見て「やはり、そうか」と納得した。

 やや古い話で恐縮だが、筆者は日経アーキテクチュア2005年5月30日号に「設計者の自邸に“手すり無し”は可能か」という記事を執筆した。日本建築学会賞(作品)を受賞した個人住宅の階段に当初は手すりが付いておらず、選考委員会の指摘で設計者が設置したという裏話だ。手すりがないとデザインは美しいものの、安全性も無視できないという設計者の悩みを伝えたかった。

 記事では「安全とデザインとの狭間で葛藤(かっとう)する設計者は、意外と多いのかもしれない」と締めくくったが、当時の予想がはずれていなかったことが今回のアンケートで裏付けられた格好だ。当時、デザインを重視したい設計者に意見を聞いたものの、歯切れの悪い答えも多かった。今回のアンケートでは、匿名であることもあり、現行の法規制は過剰だというはっきりとした意見も得られた。

 手すりに関して取材していると、デザイン重視の側からは手すりに関する議論を起こしにくいだろうなという空気を感じてしまう。デザイン重視を唱えることは、安全軽視だと受け止められる危険性をはらんでいるので、本音では話しにくいと思う。

 しかし、デザインと安全はまったく両立しえないものなのだろうか。確かに現状では、突破口は見つかっておらず、発見の糸口すら想像もつかないが、デザインが美しく安全性も担保され実用的でもある手すりのあり方について、積極的な議論が行われてよいと思う。

 デザイン重視派は、「規制はもうたくさん」と感じているのかもしれないが、例えば、現行の建築基準法は手すり子の設置を義務付けていないなど、階段の安全性はまだ十分でない。こうした点も合わせて、建築界がより良い形の解決策を見つけてほしい。