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 7月16日、新潟県中越沖地震の第一報を聞いて、被災地の様子とともに気になったのがフジテックのエレベーターのことだ。同社のエレベーターは強度不足の鋼材を用いていたため、560基で補強工事が必要となった。大地震時に鋼材がゆがんだりすることによって、エレベーターに人が閉じこめられるなどの危険があるといわれていた。

 補強工事の対象となるエレベーターは、新潟県に5基、長野県に7基あった。フジテックや鋼材を納入したJFE商事建材販売の関係者は、大地震発生の知らせを聞いて「揺れの大きかった地域で大きなトラブルが起きていないか」と、冷や汗をかいたに違いない。フジテックに問い合わせたところ、結局、鋼材の強度不足に起因した、この地震によるトラブルは起きなかったということだ。

 実は鋼材の強度不足にまつわる、忘れられない取材体験がある。

 1991年9月19日、千葉県松戸市の工事中のトンネルに台風であふれた川の水が流れ込み、建設会社の社員や作業員など7人が死亡した事故だ。トンネルの入り口には「仮締切」と呼ぶ水止めの仮設構造物が設けられていたが、押し寄せた濁流によって破壊され、トンネルは水没した。このとき仮締切をコンクリートに固定していたアンカーボルトが、設計で想定したよりも強度の低いものだった。

 関係者に話を聞いて回った結果、設計者の意図が施工者に伝わらず、強度の低い鋼材が使われていたことがわかった。事故から1年後、発注者である千葉県が設けた事故調査委員会は、設計水位を上回る出水が直接の原因となり、いくつかの要因が複合して事故が起きたと結論づけた。アンカーボルトの強度不足は、要因の一つに位置づけられていた。

 真のメカニズムは究明しようもないが、私の心の中には「仮締切の鋼材が設計通りの強度をもっていたら、7人の命が失われなくて済んだのではないか」という、やり場のない思いが残っている。事故の翌日、トンネルに流れ込む濁流をみつめながら「仲間がまだ出てこないんです」と語った建設会社社員の姿が忘れられない。

 災害や事故は突然、想定を超えてやってくる。強度不足エレベーターの補強を急いでほしい。エレベータに限らず、建物や設備などの建設・製造にかかわる人は、材料の確認を怠ってはならない。