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 いつの間にかルールが変わっていた。しかもそのルールは知らされていなかった--。今日、話を聞いた住宅の構造設計者は、改正建築基準法に対する憤りをこんなふうに表現した。

 改正法の施行前に建築確認が下りた増築工事で、「新ルール」に基づく計画変更届けの提出を求められ、工事がストップしてしまったのだという。この住宅は軽量鉄骨造の2階建て。増築部分の間仕切り壁に変更があったので、6月20日以降に確認検査機関に相談したところ、「それでは新しいルールに基づく構造計算をやり直して、書類を提出してください」と言われた。

 予想外の展開だった。指示されるままに改正法に基づく「構造計算概要書」の作成に取りかかったところ、その枚数はA4判で100枚ものボリュームになってしまった。「一度、構造の審査は済んでおり、構造の規定自体は変わっていないはず。言うなれば同じ構造計算書をとてつもなく面倒な書式で出し直した格好だ。それだけのために膨大な手間がかかった。どうにもバカらしくて納得がいかない……」と、この設計者は訴える。

 ケンプラッツが7月下旬に建築実務者に対して行った「改正建築基準法施行1カ月アンケート」でも、現場への影響が浮かび上がった。「改正建築基準法の施行後に建築確認が下りないために着工が遅れた、または遅れている物件がありますか」という問いに対して、回答者1008人の半数近い451人が着工遅れなどの影響が出ているとした(改正建築基準法施行1カ月アンケートの結果はこちら)。

 建築実務者や消費者への告知が不十分なまま、6月20日に施行された「周知なき法改正」の影響があちこちで目立ち始めた。国土交通省の和泉洋人住宅局長も、7月25日の就任会見で「法改正によって現場が混乱しているのは事実」と認めざるをえず、運用の周知徹底を急ぐ考えを示したという。

 前出の構造設計者は「なんでスケジュール的にそこまで急がなければならなかったのか。期日が決められていたからといって、ここまで準備不足で改正しなければならなかった理由がわからない」と言う。これは多くの実務者の偽らざる実感だと思う。

 今回の法改正について、国土交通省も意図的に告知しなかったわけではないだろう。定められた期限までに改正作業を進めるのに手一杯で、とても周知するだけの余裕がなかったのが現実だと思う。膨大な改正作業に追いまくられていた職員の姿は同情も誘うが、建築政策を司る官庁として機能不全に陥っていると指弾されても仕方のない状況だろう。

 周知なき法改正の波紋は、これから一般の消費者を巻き込みながら、より広がっていくはずだ。我々がすべきことは、問題の存在をできるだけ早く、具体的に明らかにすること、そして混乱を乗り切るための処方せんを伝えることだと感じている。