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 かれこれ10年以上前、住宅の設計を手がける若手建築家たちを取材するたびに、「プランは工夫しているものの、デザインとしては似たり寄ったりだ。新鮮味がない」と感じた時期があった。編集部に寄せられる彼らの“新作”は、どれも既視感があった。やりたいデザインがあるだろうに、それが伝わってこない。「何が問題なのか」を探りたくて、彼らとよく議論した。

 「選ぶ建材や設備が、最終的に同じになるから、似たり寄ったりになる」「建材・設備のデザインがそもそも悪いから、住宅のデザインが良くならない」――。そうした理由を挙げる若手建築家が少なくなかった。流行やコストの制約から、彼らのつくった住宅は、似たような建材・設備を採用するケースが多かった。ただ、「住宅のデザインが悪いのは、建材・設備のデザインが悪いから」と彼ら自身が言うことには疑問符が付いた。“建築家の言い訳”にしか聞こえなかった。

 それから5年ほど経って、若手建築家たちの多くは、オリジナルの建材・設備をつくることに精を出すようになった。「使いたい建材・設備がないのだから自分でつくるしかない」「設計だけでなく施工まで手がけた」――。編集部に寄せられる“新作”でも、そうした点が強調されていた。確かに彼らのつくるオリジナルの建材・設備は、デザインとしては目新しいものが多かった。ただ、建材や設備としてみると、「機能や耐久性」の面で疑問符が付くものが少なくなかった。“建築家の一人よがり”にしか思えなかった。

 建築家たちがつくる最近の住宅はどうだろう。10年前、あるいは5年前とさほど変わっていない“新作”もある。しかし、デザイン面でも機能や耐久性の面でも納得できる建材・設備を用いた住宅も登場し始めている。環境対応を重視する住宅が増えてきたことが一因だが、それだけではない。設計した建築家に話を聞くと、「建材・設備メーカーと一緒になって製品を開発した」「建材・設備メーカーから詳しい話を聞いてから製品を選ぶようになった」と、その意識の変化を語る。

 昔から、建材・設備メーカーと協働して製品を開発する建築家はいた。ただし、少数派だった。これからは、「住宅のデザインを良くするために、メーカーと一緒になって建材・設備のデザインを向上させていくことが大事」。そう語る建築家が増えてくる予感がしている。建材や設備のデザインの質も徐々に向上してきている。建材・設備のデザインの悪さを住宅のデザインの悪さの言い訳にできた時代は終わりを迎えるはずだ。