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 パソコンと小型プロジェクターを持ち込み、色鮮やかで動きのあるプレゼンテーションを発注者に披露する。これはもはや建築設計者の仕事の一つと言っていいだろう。パースの画像ファイルやエクセルのグラフをパワーポイントに取り込み、アニメーション機能を駆使する。OHPのフィルムを1枚1枚取り換えていたころを思うと、昔日の感がある。

 しかし、この定石に飽き足らなさを感じたり、パワーポイント独特のビジネスくささに不満を持ったりしている設計者の声も聞く。そんななか、ちょっとした工夫で“この先のプレゼンテーション”を探っている設計者に出会った。

 例えば、平田晃久建築設計事務所の平田晃久代表は、パワーポイントにコンパクトデジタルカメラで撮影した動画を取り込み、自ら設計した建築の空間を次なる発注者に“体感”してもらっているという。「図面や写真だけでは伝わらない、動画でなければわからないことがある」と平田氏は言う。

 コンピューターグラフィックス(CG)で立体映像のウオークスルーを制作する手もあるし、実際に利用している設計者も多いだろう。しかし、立体CGの制作には手間もかかるし、あくまで仮想空間に過ぎず、実写にはかなわない部分がある。今どきのデジカメならたいてい動画撮影機能が付いており、汎用性の高いファイル形式で保存するので、たいていのパソコンで再生できる。ハイパーリンク機能を使えば、パワーポイントでスライドショーを動かしている最中、デジカメ動画を開くように設定することは簡単だ。身近な機材の標準的な機能を利用するのだから投資も不要。しかも、手軽に効果的なプレゼンテーションができるわけだ。

 ある設計事務所ではアプリケーションソフトの見直しを検討していた。パワーポイントで使えるフォントや効果が、設計している建築のイメージにマッチしないことがあるからだ。彼らが検討していたのはVJソフトの採用。グラフィックイメージを映写したり、コントロールしたりするためのソフトだ。ミュージシャンのライブ会場などで専ら利用される。

 ミュージシャンなどが使用するだけあって、標準で付いているフォントや背景、効果などもハイセンスだ。キー操作による画面切り替えはスムーズ。ソフトによっては、リアルタイムでテロップを入力してアニメーション的に動かすことができるといった高機能なソフトもある。建築のプレゼンテーションに、意外に合うそうだ。人気の高いmotion dive.tokyoでも3万5000円程度。探せばフリーソフトもある。エクセルやワードとの相性がパワーポイントに劣るため、実用には至っていなかったが、“この先のプレゼンテーション”を考えるうえで、意味ある試みだと感じた。

 ITやデジタルという言葉だけ聞くと、何やら複雑で、高価な機材やソフトを購入しなければならないといったイメージを持っている人も多いだろう。しかし、動画一つ取っても、新たにデジタルビデオカメラを購入することなく、手持ちのコンパクトデジカメで撮影できる。フリーソフトや安価なソフトを採用すれば、パワーポイントなどの普及品にはない効果を打ち出せる。もちろん、発注者にわかりやすい言葉を使うといった、プレゼンテーションの基本は前提。そのうえで、発注者にインパクトを与えるデジタル機器・ソフト活用に挑戦するのも面白いのではないか。

 デジタルに明るくない人は、知り合いや所員にアイデアを出してもらってもいいだろう。ちょっとした工夫で、より効果的な“この先のプレゼンテーション”を編み出してみてはいかがだろうか。