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 11月21日,中空床版橋の工事に使う円筒型枠の強度試験データを,栗本鉄工所が約40年間にわたって改ざんしていたことが明らかになった。

 耐震強度をはじめ,最近はニチアスや東洋ゴム工業の建材性能など建築物で偽装の問題が相次いでいるが,土木の分野でも改ざん自体は珍しくない。

 ここ1~2年で最も目につくのが,完成工事高や施工実績といった自社の経営状況を偽るケース。小規模な建設会社を中心に,経営事項審査の虚偽申請が相次いでいる。

 施工ミスの隠ぺいも多い。例えば,国交省東北地方整備局が発注した宮城県・石積高架橋工事の施工ミス。床版を設計より最大84mmも高く施工していたが,施工者は床版の高さが規格値を満足するよう実測値を改ざんしていた。

 施工ミスが原因で写真を改ざんした工事もある。富山県高岡市内で商店街のアーケードを改築する工事で汚水管を破損したが,施工者は写真を無断で修正。「汚水管は確認できなかった」と,発注者の国交省富山河川国道事務所に虚偽の報告をした。

 労災隠しも減る兆しは見えず,ここ2~3年で送検された件数は毎年100件を超す。そのうち,3分の2以上を建設業が占めている。


 受注者だけではない。福岡市などの発注者も偽物の測量図を使って契約するなど,「その場しのぎ」で図面を改ざんしていた。

 改ざんや隠ぺいなどが生じる理由は,当たり前だが「隠しても発覚しないだろう」と考えるから。併せて,施工ミスを隠した建設会社からは,「手抜きしても構造物が壊れることはない」といった安易な判断も聞かれる。

 冒頭の栗本鉄工所のケースも含め,隠すことで得られるメリットにしか考えが及んでいないのではないか。改ざんや隠ぺいが違反行為であり,法律などを犯せば罰せられるということが見えなくなっている。

 公益通報者保護法が2006年4月1日に施行したこともあって,不正行為を告発するケースは増加している。労災隠しでは従来,被災者が労基署に訴え出るケースが多かったが,当事者以外の通報が増えてきたという。

 事故を起こせば必ずしも指名停止になるわけではない。例えば東京都では公衆に与えた損害を重視し,大阪府では安全管理の措置が適切か否かを重んじている。

 このような基準を知らず,本来なら指名停止にならなかったのに事故を隠して発覚し,重いペナルティーを科せられた会社もある。

 現場の運営や企業の経営に余裕がなくなり,指名停止などの基準を十分に理解しないまま隠してしまう--。こんな,漠然とした過剰な不安が改ざんや隠ぺいを促している側面がある。

 労災を隠したある専門工事会社は,「元請け会社に迷惑がかかる」と説明しているが,現場や会社,業界だけを見ていては,そこで思考が止まってしまう。

 学会や協会などがモラルや倫理観の重視を訴えているものの,それだけでは難しい。外の世界にも目を向けないと,改ざんや隠ぺいがさらに増えることになる。