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 2008年のNHK大河ドラマ「篤姫」は、黒船来航直前という時期の薩摩藩を舞台としてスタートした。主人公は藩主一族のお姫様だが、脇役には若い藩士たちが数多く登場している。彼らの何割かは倒幕と王政復古の時勢を先導しながら、明治維新後、武士階級をなくそうとする時代の流れには取り残された。後に西南戦争を起こして、徴兵制に立脚した近代的な政府軍に敗れ去った。

 時の流れの怖さは、史書だけでなく、ふだんの取材内容にも見いだすことができる。

 1月16日、建築基準法違反の社屋を是正するよう横浜市から命じられた工務店の藤崎建業(横浜市)。もとはといえば、ずっと同じ場所で事業を続けたいという素朴な思いがあっただけなのかもしれない。しかし、1960年代の初めは農村だったという周辺が、1980年代末期には成熟した住宅街になり、工務店の社屋は用途の点で既存不適格になっていた。にもかかわらず、用途を変えずに社屋を建て替えようとしたことが、同社にとっては法規を踏み外す第一歩になってしまった。

 「違反建築取り締まりの重点も、時代とともに変化している」と、横浜市建築監察部違反対策課の久松義明課長は話す。かつて住宅地が郊外へどんどん拡大していったころは、乱開発の防止が業務の中心だった。宅地開発の勢いが衰えると、重点は都市部の違法な建て替えに移った。「ストックになった市街地を法規の面で適正にすることが、社会から強く求められている」(久松課長)。

 藤崎建業に対して是正命令という厳しい措置をとったのは、こうした「ストックの適正化」の一環だった。同社の窮地は、時代の動向を見誤った結果ともいえそうだ。

 時の流れのウォッチャーである小社も、安閑とはしていられない。自らも流れに翻弄される一企業だ。時代を動かす建設実務者にとって身近で有益な情報源であり続けるために、努力しなければならない。

建築基準法違反で横浜市から是正措置命令を受けた藤崎建業の社屋。そびえ立つ塔状の階段室(写真中央)が印象的だった。市によると、2月4日の時点でも違反は是正されていない(写真:KEN-Platz、2008年1月18日撮影)
建築基準法違反で横浜市から是正措置命令を受けた藤崎建業の社屋。そびえ立つ塔状の階段室(写真中央)が印象的だった。市によると、2月4日の時点でも違反は是正されていない(写真:KEN-Platz、2008年1月18日撮影)