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 「茶髪のお兄さんが、『すっげー』などと言いながら作業の一部始終を見守っていたんですよ――」。2007年10月に開通した新小岩陸橋(東京都葛飾区)の架設工事のときに見た出来事を、施工会社のメンバーである戸田建設の担当者が話してくれた。夜間に実施したにもかかわらず、架設の様子を見届けようと、たくさんの地域住民らが集まったという。そのお兄さんにとっては、さながら「ライブ」にでも参加するような感覚だったのかもしれない。

 この陸橋は、朝夕に慢性化していた交差点の渋滞を解消するために計画された。完成を持ちわびる気持ちが、工事に観衆として参加する行動となって現れたのだろうか。開通に先立って実施された陸橋の渡り初めのイベントにも、地域の家族連れなどが参加し、行列をつくっていた。

 このように「建設現場を楽しみたい」という人は、確かに存在する。2007年の11月18日(土木の日)に開催された、東京メトロ副都心線のトンネルを歩くイベントには、80組の募集に対して3000組以上の応募があった。

 2007年は、工場の写真集やダムの放流シーンを収めたDVDなどが一般紙やテレビで取り上げられ、ものづくりの現場や構造物に「萌え」る人々が話題になった。前述の、道路や鉄道の建設現場に集まる人々には、彼らとはまた別の思いを感じる。マニアックではないが、非日常的な新しいエンターテインメントに触れてみたいという気持ちだろうか。そういう人は、潜在的にたくさん存在しているように思う。

 街を歩けば、映画や演劇、音楽など、さまざまなエンターテインメントがある。それらとは趣向は異なるが、建設現場は工夫しだいで立派なエンターテインメントとして成立する可能性を秘めている。「イメージアップのために実施しました」と判で押したように住民参加のイベントを企画するだけでは、何だかもったいない。生き生きと働く職人の技術や最先端の施工技術は、それだけで心に残るエンターテイメントであると思う。見られる現場も活気づくのではないか。