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 建築基準法に適合する倉庫用コンテナの存在を知ったのは、昨年の12月だ。国土交通省が富山県に、「コンテナハウスでも継続使用なら建築物」という見解を示した件について、ウェブ上で情報を収集しているとき、コンテナメーカー「ワイ・エス・シー」のウェブサイトで見つけた。そんな製品がなぜ必要なのか。実際に売れているのか。ワイ・エス・シー代表取締役の森山三郎氏に話を聞いた。

 森山氏は「残念ながら売れていない」と打ち明ける。同社の倉庫用コンテナ「くら蔵」は、建築確認を得るために、JISの認定材料を使用し、一級建築士が構造計算を行い、基礎を設ける。そのため、通常のコンテナハウスを設置するのに比べて約2倍のコストがかかる。

 「基礎を設けず、地面に固定していない、建築基準法には合致しないが安価なコンテナハウスがまかり通っている。当然ユーザーは、違法でも安価に済むコンテナハウスを選ぶ」。こうした“売れない理由”を説明した後、森山氏は「姉歯建築士の一件がなければ…」と残念がった。

 話は2004年8月までさかのぼる。横浜市港南区にコンテナハウスを設置した事業者に対して、横浜市が撤去を命じた。敷地が第一種低層住居専用地域で、建築協定がかかっていたこともあって、住民が反対運動を起こしたためだ。

 これを機に、全国でコンテナハウスに対する規制強化の動きが目立つようになる。国土交通省も同年12月6日、「コンテナを倉庫として設置し、継続的に使用する例等が見受けられる。このような随時かつ任意に移動できないコンテナは、その形態及び使用の実態から建築基準法第2条第一号に規定する建築物に該当する。(中略)既に設置されているコンテナを利用した建築物について、建築基準法に適合しない事項がある場合には、違反建築物として扱い、是正指導又は必要に応じ是正命令されるようお願いする」という技術的助言を、各都道府県の建築主務部長あてに出した。
 
 「この助言によれば、ほとんどすべてのコンテナハウスが違法建築とみなされ、事業が成立しなくなる」と危機感を抱いたワイ・エス・シーなど、約20社の倉庫用コンテナ会社が05年3月、「レンタルボックス事業者連絡協議会」(現在は日本レンタルボックス協会。森山氏は副会長)を結成。05年暮れに、「国交省との協議で、コンテナをある一定の配置にすれば確認申請時に基準緩和を認める、という大臣認定を取得できる、大まかな合意に達していた」と森山氏は言う。基準緩和の内容は、建築確認申請時の構造計算免除や、JIS相当品を部材として認めることなどだったという。

 ところが折悪しく、構造計算書偽造問題が世を騒がせた。「国交省は倉庫用コンテナの大臣認定どころではなくなり、話し合いは中断してしまった」(森山氏)。国交省は、「大まかな合意に達していた」という点は否定するものの、「大臣認定について相談を受けたまま、改正建築基準法の準備などで忙しくなり、やり取りできなくなったのは事実だ」と認める。つまり「くら蔵」は、大臣認定を取得できなかったため、“力ワザ”で建基法に適合させた倉庫用コンテナなのだ。

 大臣認定を取得もできない。特定行政庁などによる、建基法に合致していないコンテナハウスに対する取り締まりが強化されている様子もない。その結果、コンテナハウスの建基法適合に取り組んだ会社は、高価な“適法”コンテナの在庫を抱えてしまった。

 「もし姉歯問題が起きず、建築基準法改正の騒ぎがなければ、大臣認定を取得できたはずだ。建基法に合致した製品をより安価に提供でき、普及にもつなげられたと思うのだが…」と森山氏はため息をつく。

 建築基準法改正の余波は、こんなところにまで及んでいたのだ。