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 旧建設省(現在の国土交通省)が「建設産業再生プログラム」を発表したのは1999年。主に大手建設会社を対象にした再生策で、得意分野に経営資源を思い切って投下する「選択と集中」の経営戦略を取るべきだとする考えを示した。

 当時はすでに土木の受注が厳しく、日経コンストラクションが実施したアンケート調査によれば、回答のあった480社の建設会社のうち、64%の会社が土木の受注高を前期より減らしていた。

 「選択と集中」によって得意分野に注力する必要性を認めながら、実態は「経費を削れるだけ削ってじっと耐え、あとは他社の破たんを待つだけ」と、消耗戦を決め込む大手建設会社は少なくなかった。

 そして、2008年。「自治体が発注する工事の落ち込みが激しい」と大半の建設会社が指摘していた2000年ごろに比べ、建設市場はさらに縮小した。

 (財)建設経済研究所によれば,2007年度の名目建設投資は当時の約25%減の49兆4000億円。政府建設投資にいたっては40%減の約17兆7500億円にまで落ち込んでいる。

 しかも受注競争の激化や資材の高騰、公共事業の低価格入札などの影響を受け、2008年3月期決算では多くの建設会社が利益を大きく減少。数十億円の赤字決算となった会社も珍しくない。

 受注環境が今後も厳しくなるなか、「利益の低下傾向にようやく歯止めがかかりそうだ」と、各社が期待するのが総合評価落札方式の拡大だ。技術力で競えることから得意分野に注力して受注増を図り、選別受注にも力を入れていくという。

 確かに、日経コンストラクション2008年5月23日号の「調査◎2007年度主要土木工事入札結果」でも、技術力や得意分野への注力などによって受注を伸ばしている建設会社は増えつつある。

 同調査では、落札件数を入札参加件数で除した「受注率」という指標も使い、各社の「受注力」を明らかにしている。しかし、トップの企業でも受注率は3割程度。7割の工事は受注できていない。受注率が1割程度の会社も多い。

 さらに、落札額や受注率が上位の企業の2008年3月期決算を見ると、例えば鋼橋の落札額のトップは川田工業だが、同社の3月期決算は橋梁工事の採算性が悪化するなどして大幅な営業損失になっている。

 三井住友建設は橋の上下部一体といった大型工事の受注で強みを発揮し、ハザマは高い受注率で2007年度の受注額を大幅に伸ばした。一方で、08年3月期決算では両社とも、前期より利益がかなり減少している。

 すべての案件の入札に「本気」で臨むとすれば、その費用は無視できない。中堅クラスのある建設会社の場合、人件費も含めれば1件当たりの経費は数百万円、年間では数億円に上るという。

 落札できた工事でそれ以上の利益を得られればよいが、昨今の平均落札率は大手建設会社で80%台。受注額の増加が収益の向上に直結する時代ではない。

 受注後の利益を十分に考えず、多くの会社が明確な勝算もなく技術競争に突き進むことになれば、残るのは技術提案の経費増に耐えられる会社だけ。

 経費の負担に耐えられなくなった他社が競争から離脱するのを待つという、新たな消耗戦が始まることになりかねない。