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 5月27日付のコラム「大胆な“階数偽装”で罰則強化はやむなしか」に対する読者のコメントのなかに、「一般に建て主の要求がない限り、設計者自らが建て主に違反建築を薦めることはあり得ない」という趣旨のものがあった。してみると、この半年間に報じた横浜市内の違反建築2件は、違反建築のなかでも例外的な事例なのかもしれない。

 そうであってほしいと思う。6月5日付で報じた中区の集合住宅(賃貸)と、1月23日付で報じた戸塚区の工務店社屋だ。建て主が建築実務者で、自ら設計・施工にかかわった点が共通している。ともに市から是正措置命令を受けた。

 中区の集合住宅は高さ規制の一種である北側斜線制限に違反し、中間検査と完了検査を受けずに竣工した。建て主で所有者の不動産会社池永クリエイティブサービス(横浜市神奈川区)が、設計・施工者を兼ねている。戸塚区の工務店藤崎建業の社屋のほうは、構造上の安全性が未確認であること、建物の用途、容積率、建ぺい率が敷地の規制に抵触することなど、建築基準法の様々な規定に違反していた。報じた時点では建築確認申請が出ていなかったため、正規の設計者名と施工者名ははっきりしなかったが、藤崎建業が設計・施工にかかわったことは確かだ。

 市の担当者である建築監察部違反対策課長の久松義明氏は、どちらの件についても、建築基準法を知っていながら違反したとみられる点を特に問題視していると述べた。一方、中区の集合住宅の設計担当者は、高さ規制の前提になる地盤面の認識が市と異なることを示唆していた。戸塚区の工務店のほうは、創業以来の数十年間で、敷地の建基法および都市計画法上の位置付けが変わっていくのについていけなかった様子だった。両者とも是正に応じる姿勢は示していた。

 建基法を初めとする建築関連法規に対して、建築実務者の間では、悪法という非難を含めて様々な意見がある。それでもやはり、実務者自らの意思で違反してしまうことは、自身だけでなく建築業界への大きなダメージになると思う。姉歯事件などで低下した社会的な信用を、いっそう損なう結果になるのではないか。

 いまは産業界のほとんどすべての業種に対し、社会が「コンプライアンス(法令順守)」を厳しく求める時世だ。建築業界だけ例外というわけにもいくまい。昨年6月施行の建基法改正に対する批判は建築業界だけでなく社会にもかなり広まったが、脱法を肯定する議論は、少なくとも表面化はしなかった。

 横浜市によると戸塚区の工務店は6月上旬の時点で、設計事務所に相談して、社屋の具体的な是正計画を作成中だという。様々な規定への違反をいかにして解消するか、今後の経過にも注目していきたい。