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 徳島県で祖谷の吊り橋と言えば「かずら橋」が有名だが、「大川橋」はご存知だろうか。吉野川の上流で、祖谷口という駅から歩いて2、3分ほどの場所に架かっている橋だ。先日、徳島への取材の帰りに気動車から外の風景を見ていると、渓谷をまたぐ吊り橋が見えた。大川橋だった。

木の床版の上を昔は軽トラックが走っていたという(写真:日経コンストラクション)
木の床版の上を昔は軽トラックが走っていたという(写真:日経コンストラクション)

 山ばかり続く景色のなかに突然現れた吊り橋に驚いて、つい最寄りの駅(祖谷口)で下車。この橋は1935年、赤川庄八氏の私財によって、土讃線の開通に合わせて造られたようだ。鋼製補剛の吊り橋で、長さは約150m、幅は約3mだ。

 1962年に池田町(現在の三好市)に寄付されるまでは「賃取り橋」として、住民は通行料を払って渡っていたという。当時から生活に密着した橋としてかけられたのだろう。その雰囲気が現在でも感じられた。

 橋の両端にはすぐ家が建ち並ぶ。玄関を出たらすぐ橋の主塔というのも、あまり見ないロケーションだ。さらに、橋の真下には畑が広がり、生活との密着感を十分に感じることができる。橋が風景の一部になっているのだろうか。畑仕事をしていたおじいちゃんが、橋を見ながら休憩していたのが印象的だ。

 下から橋を見上げようと川端まで降りようとしたが、残念ながら増水が激しくて身の危険を感じたので止めた。橋ができる前は、対岸の人が渡し舟を使わなければ祖谷口の駅まで行けなかったことを考えると、この橋の存在価値が理解できる。

 訪れた大川橋は、賃料を払っても良いと感じる魅力ある橋だった。全国にある橋は、ほとんどが無賃で渡れる。しかし、橋の維持管理費が足りない自治体の現状を考えると、全国で賃取り橋は増えるかもしれない。住民が通行料を支払っても良いと思える橋が全国にどのくらいあるのだろうか……。

祖谷口の駅から橋を渡って、対岸側から大川橋を見た風景。家と橋の距離感がわかる(写真:日経コンストラクション)
祖谷口の駅から橋を渡って、対岸から大川橋を見た風景。家と橋の近さがわかる(写真:日経コンストラクション)

橋の上からでは気付かない橋脚の存在感が感じ取れる(写真:日経コンストラクション)
橋の上からでは気付かない橋脚の存在感が感じ取れる(写真:日経コンストラクション)