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 自民党の住宅土地調査会がまとめた「200年住宅ビジョン」という資料を読んでいるときに、「福田首相、辞任」のニュースが飛び込んできた。

 9月1日の21時30分から始まった会見の中継をテレビで見た。首相はそっけない言葉で辞任の弁を述べた。職場の席に戻って再び資料を見た。「より長く大事に、より豊かに、より優しく――住宅改革・ゆとりある住生活を目指して――とのキャッチコピーの下に、平成19年5月という日付と、自由民主党政務調査会 住宅土地調査会長 福田 康夫 という文字が印刷されている。
 
 首相が辞任することで、200年住宅の事業はなんらかの影響を受けるのだろうか?
 気になって国土交通省の担当官に電話をかけてみた。

「首相の辞任で影響はありますか?」
「ありません」
「根拠は?」
「少なくとも、現在、第2回の募集を行っている200年住宅のモデル事業は、すでに20年度予算で成立しています。この部分への影響はありません」
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律案への影響はありませんか?」
「これは審議をお願いしている立場。臨時国会で、できるだけ早く成立させてほしいというスタンスで、これまで通り進めます」――

 あらためて200年住宅ビジョンに目を通すと、200年住宅を実現することのメリットとして、(1)住宅の建設・取得・維持管理のための国民負担の軽減、(2)産業廃棄物、CO2の削減、(3)わが国のゆがんだ国富構造の是正、が挙げられている。それぞれ、もっともだと思う。特に(3)については同意する気持ちが強い。日本の国富に占める住宅資産の割合はわずか9.4%だという。

 資料には「200年ビジョンが実を結ぶか否かは、そのメリットが実感を伴いながら国民の間に浸透するか否かにかかっている」とある。その通りだと思う。さらにそのためには「強力なリーダーシップのもと、政治的なメッセージを発信していくことが必要である」という言葉が続く。この部分はその通りと感じながらも、なんとなく違和感を覚える。政局のカードとして使われるほかの政策がつい頭に思い浮かんでしまうからだ。

 住宅を長寿命化させるための技術開発も、それを支える技能を育成することも、木造住宅の材料となる「木」を育てることも、長い年月を要するものだ。だから緒についた取り組みを政局論で右往左往させるようなことがあってはいけないと思う。それは短い寿命で住宅を壊すこと以上に、社会資源の無駄遣いになりかねず、今の日本にそんな余裕はないと思う。