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伊那谷の横断が意外とくせもの

 無事、南アルプスを貫通できたものの、安堵するのは早かった。というのは、伊那谷の横断が意外とくせものなのだ。大鹿村釜沢からからまっすぐ西に進むと、標高1700mの伊那山地がある。これをトンネルで越えてから伊那谷の地表を下るとすれば、下り勾配が40‰を軽く超えそうになる。

リニア新幹線の南アルプス貫通ルートを予想・検証
南アルプスを貫通した後にまっすぐ西に進んだ場合の断面図。伊那谷を下る勾配が40‰を軽く超えそうなので現実的ではなさそうだ (作成:ケンプラッツ、プログラム:Michael Kosowsky (c)2008 Michael Kosowsky. All rights reserved. 許可を得て掲載)

 上記の断面図を見るとわかるが、伊那山地から谷底の天竜川に至る下り坂は、地表を下るには急すぎ、トンネルを掘ると長くなりすぎ、トンネルを短くすると地表部に必要な高架橋が高くなりすぎるという、なんとも微妙な地形なのである。

 そこで考えられるのが、伊那谷を斜めに横断するルートだ。下る距離を延ばすことで急降下を避ける作戦だ。具体的には、大鹿村釜沢からまず西に進み、青田山と伊那山地の尾根をそれぞれトンネルで越え、進路を南西に向ける。飯田市中心街の南側に位置するJR飯田線の駄科駅付近を抜け、恵那山トンネルがある神坂峠方面に向かうのではないだろうか。天竜川付近は路線が浸水しないよう、十分な高さのある高架橋で越えることになるだろう。

リニア新幹線の南アルプス貫通ルートを予想・検証
予想ルートの長野県部分。意外と深い伊那谷に対して距離を稼ぎながら下る (作成:ケンプラッツ、地図提供:マピオン (c)Yahoo Japan)
リニア新幹線の南アルプス貫通ルートを予想・検証
上記の断面図。下り勾配を40‰程度にとどめた (作成:ケンプラッツ、プログラム:Michael Kosowsky (c)2008 Michael Kosowsky. All rights reserved. 許可を得て掲載)

経由地は必然的に決まってしまう

 今回の予想はここまでとした。作業を通じて筆者が痛感したのは、ルートの選定に自由度が意外と少なく、大方が地形によって必然的に決まってしまった点だ。そもそも机上の空論にすぎないので様々なケースを想定してみたりもしたが、物理的な制約を考慮しようとしたとたん、合理的な解決が難しくなった。

 鉄道は高速性を追求するほど、路線を曲げにくくなり、勾配も緩くする必要がある。山岳地帯の新線計画では、特にそれが顕著になる。リニア新幹線は、勾配には強いとされているものの、曲率半径はこれまでの新幹線より大きくするようだ。

 今後、ルートの選定をめぐって、建設する側と自治体側とで政治的な駆け引きが激しく繰り広げられるだろう。その際に、建設する側がコントロールできないほどの物理的与条件については、自治体側が理解を示す必要があるように思う。