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調査は中断、ボーリング跡は雨ざらしに

 釜沢の現場は、宿泊した大河原からさらに東南に4kmほど離れた小渋川の上流にある。

 現場に通じる道路は、非常に狭い。目印や案内が少なく、うっかり道を間違えてしまった。川沿いの行き止まりにぶつかったり、山を上りすぎたり…。釜沢の集落の近くで対向車が近づいてきたので運転している人に尋ねてみた。彼の指差す先のはるかかなたに、橙色の囲いが見えた。そこが目的地だ。

リニア新幹線の水平ボーリング調査・長野県大鹿村
釜沢の集落がある高台から水平ボーリング調査の現場を南東方向に見下ろしたところ。流れているのは小渋川。晴天であれば、川に沿って南東に続く谷間の先に標高3120mの赤石岳が見える (写真:ケンプラッツ)

 道路をジグザグに下り、現場に到着した。川沿いが小さな平地だ。

 そこは半ば“廃墟”になっていた。誰かがなにかをしている形跡は、感じられない。訪問したのは日曜日だったが、それを差し引いても、人気がなさすぎる。プレハブの小屋に生活感はなく、工事名や社名などを示す掲示物は全くない。

 既に報じられているが、調査が中断しているのだ。山梨県早川町の現場と同様、さらなる水平ボーリング調査のためには作業坑の掘削が必要であり、機器を置くための広いスペースが要る。そのためJR東海が7月、村農業委員会と県に周囲の農地の一時転用許可を申請した。村農業委員会は認めたものの、8月になってJR東海が申請を取り下げた。真相は明らかにされていないが、環境が整い次第、調査は再開に向かうようだ。

 囲いの中をのぞいてみると、ボーリングの跡が見えた。向きはほぼ東で、先には南アルプスがある。ボーリング機を設置していたと見られる部分が雨ざらしになっており、窪みに水たまりができていた。調査が実施されていたころには屋根がかかっていたものの、中断を機に撤去された。

 調査時には、細い道路をダンプカーが走っていたという。径の大きいトンネルを掘るには、残土の置き場や搬出の方法に課題が生じそうだ。村の中心部に通じる道路だけでなく、そこから先の伊那谷へ抜ける道路も、まだ多くの区間が狭い。土砂搬出のために、先に伊那谷へ抜けるトンネルを掘った方がよさそうに思えてくる。

リニア新幹線の水平ボーリング調査・長野県大鹿村
現場を東側から見たところ。写真の手前側に向かってボーリングされている (写真:ケンプラッツ)
リニア新幹線の水平ボーリング調査・長野県大鹿村
囲い越しにボーリング跡を見たところ。向かう先に南アルプスがある (写真:ケンプラッツ)
リニア新幹線のボーリング調査
水たまりとなった窪み部分。調査が行われていたころには、ボーリング機の設置部分に屋根がかかっていた (写真:ケンプラッツ)
リニア新幹線の水平ボーリング調査・長野県大鹿村
周囲を見渡すと、山肌が露出している個所があった (写真:ケンプラッツ)

 現地に、夫婦が見学に来ていた。近隣の自治体に住んでおり、紅葉を見がてら足を運んだという。

 リニア新幹線の南アルプス貫通は大きな関心事だが、飯田・下伊那地区の人の思いは複雑だ。JR東海が推進する南アルプス貫通ルート(Cルート)でも、長野県などが求める諏訪・伊那谷経由(Bルート)でも、飯田市付近を通る。しかし、駅は1県につき1カ所しか造られないと見ており、それゆえに諏訪経由の場合は飯田・下伊那地区に駅が設置されないだろうと気をもんでいるのだ。本音では密かにCルートを期待している人も多いようだ。

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