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気になる南アルプスの隆起と中央構造線・糸魚川静岡構造線の存在

 山梨と長野の現地を訪れて、印象的だったのは険しい地形だ。南アルプスだけでなく、東側の巨摩(こま)山地、西側の伊那山地も急峻(きゅうしゅん)だ。山の斜面に大規模な崩落が多く見られるなど、地山のもろさが目に飛び込んでくる。

 南アルプスは現在も隆起が続いている。日本列島が東西から押される形で、南アルプスは過去100年に40cmも隆起していると想定されている。トンネルを施工する際に落盤が生じるなどの恐れがある。

 南アルプスと伊那山地の間には中央構造線、南アルプスと巨摩山地の間には糸魚川静岡構造線(糸静線)が、それぞれ南北方向に走っている。両構造線については、南アルプス近辺では活動性が低いものの、破砕帯の存在がトンネルの施工に影響を与える恐れがある。複数の破砕帯が確認されている。ちなみに、伊那山地と南アルプスに挟まれた谷と早川沿いの谷は、それぞれの構造線に由来する侵食によって形成されたものだ。

長野県大鹿村北川にある中央構造線の北川露頭
長野県大鹿村北川にある中央構造線の北川露頭。異なる地質が接している。左側を領家変成帯、右側を三波川変成帯という (写真:ケンプラッツ)
長野県大鹿村大河原で見られる大西山の崩落
長野県大鹿村大河原で見られる大西山(標高1741m)の崩落。中央構造線の西側に当たる伊那山地に属する山だ。1961年の大雨(昭和36年梅雨前線豪雨:36災害)で高さ451m、幅280mにわたって崩落が起こり、42人が亡くなっている。河川は小渋川、右端の建物は村立大鹿小学校 (写真:ケンプラッツ)

 リニア新幹線計画は、このところ展開が慌しい。国交省は早ければ2008年内にも、輸送需要量・供給輸送力、施設・車両の技術開発、建設費、その他必要事項の4項目について、JR東海などに調査の実施を指示する。金子一義大臣は経由地や中間駅について、JR東海が自治体との調整を先行させることが望ましいとの考えを示している。

 一方、JR東海の松本正之社長は11月、2010年代前半に路線を着工したいとの意向を表明した。駅ターミナルの整備や南アルプス貫通トンネルの建設に10年以上かかるとみており、開業目標である2025年から逆算すると、遅くとも2015年までに着工する必要があるという。

 東京-大阪間の現在の大動脈である東海道新幹線は、開業から44年がたち老朽化が進んでいる。大規模修繕する必要に迫られており、部分的な運休を余儀なくされるのではという意見もある。リニア新幹線を代替路線として利用できるようにするためにも、長野県側で中断している調査を早期に再開すべきだろう。