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技術・コスト面の課題は通常と大きく変わらず

 実際に大深度地下にトンネルを掘るとなれば、どんな課題が生じるのだろうか。考えられることを挙げてみる。

 大深度地下については、大深度法(大深度地下の公共的使用に関する特別措置法)が手続きなどを定めている。通常は利用されない深さの地下を「大深度地下」と定義し、公共の利益のための事業として認可されれば、原則として地権者への事前の補償なしに、事業者が地下空間に使用権を設定できる。

 大深度地下の深さは、建築物の支持地盤の深さによって決まる。具体的には、(1)地下40m以深、(2)構造物の基礎の支持地盤上面から10m以深――のうち深い方になる。

大深度地下の定義
大深度地下の定義。支持地盤が浅い土地では深さ40m以深、深い土地ではそれより深い位置になる (資料:国土交通省がまとめたパンフレット「大深度地下」から)

 大深度地下トンネルとはいっても、特別な工法が大深度法で求められているわけではなく、特別に固い岩盤でなければ、通常のシールドトンネル工法で施工できるだろう。地上の建造物に対する影響については、2001年6月に国交省が技術指針・解説を取りまとめるなどして、“お墨付き”を与えている。都内では既に、都営地下鉄大江戸線や東京メトロ南北線などで、最深部が40mを超える鉄道トンネルが掘られている。

 事業コストは通常の地下トンネルよりも低くなるとされている。トンネルが深い分、機材や資材を搬出入するための立坑を長くする必要が生じる反面、土地の買収が不要で施工距離も直線的に短くできるからだ。

 都内での大深度地下の深さは、おおむねJR京浜東北線の東西で傾向が分かれる。東側では支持地盤が深い位置にあるので地下50m以深、地下60m以深といった具合に深くなるものの、西側では多くが地下40m以深にとどまっている。リニア新幹線のルート上では、大深度地下トンネルが極端に深くなることはなさそうだ。

 建設する側で想定されるの技術・コスト面の課題は、通常のシールドトンネルと大きくは変わらない。

都市計画上の建築制限が生じるか

 では、大深度地下を利用してもらう側の地権者にとって、どんな課題があるのだろうか。

 大深度地下は最も浅いケースで深さ40m以深だ。深さ40mといえば、オフィスビルなら地下10階、集合住宅なら地下14階に相当する。一般的な利用例は考えられないので、実害はないように思える。

 しかし、都市計画法による建築制限などが生じる可能性がある。

 例として、外環道路の大泉ジャンクション-三鷹ジャンクション(仮称)間の場合をみてみる。大深度法の適用はまだ受けていないものの、東京都は適用を前提に都市計画を定めた。大深度地下トンネル上部の指定区域内では、中高層ビルなどを建築する際に、建築主に対して自治体の許可を求めている。許可の条件として、建物の基礎や地下室などがトンネルの構造に影響を及ぼさないことが必要になる。

 リニア新幹線の大深度地下ルート選定に当たっては、恐らく“重い”建物が既に建っている、または、建てられる可能性がある商業地域などを極力、避けるものと思われる。都市計画決定をする際には、地権者に対して十分な説明を行い、理解を求める必要があるだろう。

 リニア新幹線プロジェクトは、首都圏だけでも約40kmという長大なトンネルを、これまで経験のない手続きを経て掘削する。トラブルが生じないよう、土木、建築、都市計画の専門家が知恵を寄せ合い、万全を期して望んでほしい。