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 取材先の住宅会社の人に、住宅の音に関する悩みを聞いた。木造住宅の場合、高気密、高断熱の施工方法が一般的になり外部の音が室内に入りにくくなったせいか、住宅内の生活音を気にする建て主が増えてきたという。

 ある住宅会社のケースでは、二世帯住宅の建て主から「2階の息子夫婦の生活音がうるさい。なんとかならないか」という相談を持ちかけられたと聞いた。防音性能を持ったフローリング材などを使えば、ある程度の生活音は防げる。しかし、「完全に音の漏れを防ぐのは難しい」と、その住宅会社の担当者は頭を悩ませていたようだ。

 改めて住宅内の生活音を考えてみると、色々な要素があることに気がついた。ドアやサッシの開け閉め、階段の上り下り、床を歩く音に、いすを引く音。キッチンやバス、トイレといった水まわりでは、給排水の音は付きものだ。

 居住者の動作に伴う音以外にも、生活音はまだある。電話やインターフォンなどの呼び出し音。電気ポットや炊飯器、電子レンジなどの家電製品や、ふろ給湯器のリモコンなどが発するお知らせ音。音声で警告してくれるガスコンロなどを備えた家では、声も聞こえてくるだろう。

 意図的に発しているわけではないが、静かな室内では気になる音もある。たとえば、換気扇や、冷暖房機のファンの駆動音。パソコンやHDDビデオレコーダーのようなデジタル家電も、本体を冷却するためのファンが作動し、意外と音を発生させているのに気がついた。外部からの音が聞こえなくなればなるほど、住宅内の音は目立ってくる。

 これから先、住宅の気密性がさらに向上し、外部の音が聞こえにくくなればなるほど、これらの生活音を気にする建て主は増えるのではないだろうか。そのうち、建て主のニーズを先取りして、壁に吸音材を採用して音が響かないなどの工夫をした静かな住宅も建てられるかもしれない。

 いや、逆手にとって音を住空間に取り込むという考えはどうだろうか。たとえば、鹿(しし)おどしや水琴窟(すいきんくつ)のように、日本には古くから、住宅で音を楽しむ趣があった。心を和ませる音があれば、不快な生活音などを隠す効果も期待できる。

 以前、イエイリ建設ITラボで紹介したコクヨの「サウンドマスキングパーティション」はまさに、音を音で隠すといったアイデアのものだ。パーティションの中にスピーカーが隠されていて、常に他の音が流れて気になる音をかき消してくれる。さすがに、住宅の壁中にスピーカーを埋め込んで音を流し続けるわけにはいかないだろうが、生活音が気にならなくなるような音を使った演出は必要だと思う。

 住宅内の照明をデザインするように、住宅内の音を設計する“住宅サウンドデザイナー”という職業も当たり前になる――というのは考え過ぎだろうか。