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 「バイオマス利用のための過給式加圧流動炉の開発」「太陽エネルギーを最大限利用するパッシブソーラーとタンデム型太陽電池のハイブリッドシステムの開発」「トイレ・水回りの改善等による既存ストックにおける環境負荷低減技術の開発」――。

 これらは国から助成を受けて開発をしている建設系先端技術の課題名だが、共通点は名称が長いこと。専門用語が並んでいるのも特徴といえる。国や自治体が作成する資料には、こういう長くて難しい表現が数多く登場する印象を受けるが、一体どうしてなのだろうか。

 長くて専門用語の並んだ表現は実に悩ましい。取材を申し込むときも、名称の長さから早口言葉のようになってしまい、自分で何を言っているのか分からないこともしばしば。取材後であれば、自分なりに言葉を置き換えて説明することも可能だが、取材前となると上司に取材概要を報告するのも一苦労だ。

 実際に、こういった名称の名付け親である某研究員に聞いたところ、意外にもあっさり「おっしゃる通り」という言葉が返ってきた。曰く「もっと分かりやすい表現にしたいのはやまやまだが、なかなか難しい」。理由を尋ねると、研究課題などの名称は専門家が一目見て理解のできる表現にすることが多いらしい。同業者間の暗号というと大げさだが、分かる人が見れば、何が新しい技術なのか、何が既存の技術と異なるのかなどが一目瞭然(りょうぜん)という。

 なるほど。専門知識のない私などは蚊帳の外というわけだが、素人に合わせるがゆえに、専門家が混乱するのも何となく気が引ける。なんていう話を、某省の事務官にぶつけてみると、「20年前に比べればこれでも役所の文章はかなり分かりやすくなった」と返ってきた。

 事務官は言う。「情報発信といえば、かつては役所が出した専門用語いっぱいのリリースを、マスコミが分かりやすく要約して一般に発信していた。これがインターネットなどの普及により、マスコミを介さずに、リリースに直接目を通す人々が増えてきた。その結果、マスコミに任せきりだった文章の要約を、自分たちでやらなければならなくなった」

 それでも、理解しにくい表現が多いと意見すると、事務官は「我々は1つの立場から物を書けない。色々な人々の利害を考えなければならない中立の立場だ。正確性や客観性を求められるので、必然的に文章が複雑化したり、長くなったりする傾向がある」と力を込めた。

 こんな話もある。埼玉県には、知事の議会答弁を職員が作成する際に、「一文40文字以内」という基準がある。埼玉県によれば、この基準を設けたのは上田清司知事。数年前、議会答弁を審査中に「役人の文章は長い!」と発言し、この基準が誕生したという。埼玉県では議会答弁に限らず、記者会見用の発表資料についても、原則的に専門用語の使用を禁止し、分かりやすい表現にこだわっている。

 上田知事に直接、その胸のうちを尋ねると、「文章が長いと主語と述語があやふやになる。役人の文章は“1+1=2であるが、しかしながら…”といったものが多く、それでは分かりづらい。専門家が理解していればそれでいいのではなく、誰でも分かる表現が必要だ」。40文字という基準については「新聞各社の社説を調べたら、どの社も一文40文字前後だった」とのこと。ちなみに、一番短くて美しい文章を書く文豪は川端康成で、二番目は志賀直哉なのだそうだ。

 前出の事務官の言葉を思い出し、文章を短くすることで、正確性や客観性などが損なわれはしないか聞いてみると、「そんなことはない。長い文章は多くの場合、役人の責任回避に過ぎない」との厳しいコメントが返ってきた。

 今回、取り上げたのは一部の人々の意見に過ぎず、「文章の書き方」「表現の仕方」については多くの考えが存在するだろう。書くことを生業としている身にとっては、役人であろうがあるまいが関係はなく、取材をしながら耳の痛くなる話が多かった。

 自分の書いた記事に対する意見などが手元に届くと、ごもっともと思うこともある一方で、「この立場になったらどんなに大変か分かるはずだ」などと腹の中でブチブチ思うことも少なくはない。色んな言い訳も“多くの場合は記者の責任回避に過ぎない”なんて考えたら、落ち込むのと同時に、責任の重さがずっしりとのしかかってきた。