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 街角のオフィスビルに掲げられた「FOR RENT」「テナント募集中」の看板。なかには丸ごと封鎖されたビルもある――。今から7年ほど前の2002年、東京都心のオフィスエリアでよく見かけた風景だ。当時の東京都心部は賃貸オフィスビルの空室率が7%前後で、なお上昇を続けていた。その後、大型ビルの相次ぐ完成によって需給バランスが崩れる「2003年問題」が発生。築浅の大型ビルが古い大型ビルからテナントを奪い、古い大型ビルが中小型ビルからテナントを奪う連鎖的なテナント移転を目にすることになる。

 時を経て、賃貸オフィスビルの空室率が再び上昇局面にある。空室率の上昇=稼働率の低下。つまり、借り手が見つからずに使われないオフィスが増えている。

 オフィス仲介大手の三鬼商事が発表した調査月報によれば、東京、名古屋、大阪の三大都市圏とも前月比で空室率が上昇(稼働率が低下)した。東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の1月末の平均空室率は4.93%だ。5%を下回っているので、「けっこう使われている」と見ることもできるのだが、私が着目したのは新築ビルの空室率である。新築ビルの1月末の空室率は26.47%。1年前の4.57%から大幅に上昇した。「2008年に完成した大型ビルの多くが、まだ募集面積を残しているため」と、三鬼商事の調査月報は報告している。

<東京都心5区のオフィスビル空室率:三鬼商事調べ>
 平均    08年1月 2.55% → 09年1月 4.93%
 新築ビル 08年1月 4.57% → 09年1月 26.47%
 既存ビル 08年1月 2.48% → 09年1月 4.61%

 新築ビルの空室率急上昇は、企業が置かれた状況を映し出している。業績の悪化によって、オフィス賃料の増加につながる拡張移転が難しくなっているのだ。ビルの貸し手である不動産会社は、数年前の好調期に練った収支計画に基づいた賃料を想定しているから単価を下げにくい。一方、テナントの多くが望んでいるのは、コスト削減に結びつく面積縮小や拠点統合だ。こうして、貸し手の条件と借り手の条件は折り合わず、新築ビルの空室が増えていく。

 さて、この先どんなことが起きるのか。

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