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相次ぐ消費者保護の司法判断

 建築行政の過失を認めたケースとしては、構造計算書偽造事件での建築主事の審査責任を巡って争われた訴訟で、名古屋地裁が2月に下した判決が記憶に新しい。建築主事の役割を「危険な建築物を出現させない最後のとりで」と指摘。愛知県半田市内のビジネスホテルの確認審査で、愛知県に過失があったと判断した。今回の長野地裁諏訪支部判決でも、発注者保護という建設業法の目的に言及し、許可権者の長野県に審査の責任を突き付けた。

 一連の判決は、行政による審査の責任範囲を広げるものだ。法などで定めた基準に沿った形式審査にとどまらず、実態審査を求めている。「訴えられる可能性はないか」と、不安視する自治体の関係者は少なくない。

 地裁支部判決の直後の5月15日、長野県の村井仁知事は記者会見で、「県の主張が認められなかった残念な判決」と述べた。「業者に対して、より力の弱い消費者を守るためにどのような手続きが要るのかということは、社会情勢に即した対応が求められることは事実。そうした大きな流れの中で今度の判決も出ているのだろう」。

 村井知事は「一般論」と断ったうえで、「一定の業についての許可を本当に厳重にしたら、いろいろな意味で社会生活に大きな支障になるだろう」と語った。さらに、「行政事務のある程度の簡素化が規制緩和というような形で行われてきたのが、ここ十数年の傾向だ」「例えば、構造計算という技術的なことについて、審査がかなり軽くなった結果、姉歯事件のような問題が起きた」との現状認識を示した。

 一方で、食品輸入に際しての検疫が抜き取り調査であることを例に挙げ、厳格な審査が「社会を運営していく上でのコストとして適当であるかを議論しなければならない」とも語った。

 長野県は5月22日に、判決を不服として東京高裁に控訴した。判決を受けて、「直ちに手引きを見直す考えはない」(建設部建設政策課)という。だが、消費者保護を重視する司法判断が相次ぐなかで、行政による審査が保守的になり、厳格化が進む可能性がある。建築界は今後、消費者の視点から行政の役割を見直すことが必要になるだろう。