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ルート近辺に落差550mの崩壊地

 図2の地質図に戻ります。中央構造線と東側の戸台構造線との間は三波川変成帯です。三波川変成帯の岩石は地すべりを起こしやすく、高所の地すべり跡の緩い斜面に古くからの集落が発達しています。写真1の左側の赤石山脈側の斜面が緩やかなのは地すべりのためです。

 地質図で黄緑色に塗られた部分は薄くはがれやすい結晶片岩(黒色片岩や緑色片岩)です。『中央新幹線調査報告書』では南アルプス・伊那山地における施工上の留意点として「三波川変成岩類(黒色片岩、緑色片岩等)は硬質で比較的良好な地質である」と書かれていますが、これは赤石山脈では完全な誤りで、大鹿村小塩や入谷(にゅうや)、飯田市南信濃の比田(このた)などでは大規模な地すべりが生じており、国土交通省や長野県による地すべり防止工事が行われています。

 青緑色に塗られた部分は塊状の緑色岩体です。緑色岩は変質した海洋底玄武岩で、かつて南方の海洋プレート上にあった海底熔岩台地がアジア大陸の縁まで運ばれて付加したものです。緑色岩体はほぼ水平な断層で結晶片岩の上に載っています。固い岩石ですが滑りやすい結晶片岩の上に載っているためゆっくりとクリープ(滑動)してブロック化しており、崩落や崩壊性地すべりを起こします。

 紫色に塗られた部分は、海底熔岩台地のマグマ溜りで沈積したかんらん岩・蛇紋岩体です。かんらん岩が変質した蛇紋岩は固体でありながら塑性変形するやっかいな岩石です。割れ目に沿って一部が蛇紋岩化したかんらん岩体はサイコロを積み重ねたような状態になっていて大規模な崩落を起こします。

 写真2は、釜沢の下流2.5kmの、小渋川左岸の鳶ケ巣(とびがす)の大崩壊地です。ここでは上青木かんらん岩体が、小渋断層が下刻された断層谷に切られ、標高1320mの尾根から標高770mの河床まで、落差550mの斜面全体が崩落しています。Cルートは、このかんらん岩体の下を掘り抜くことになります。

 青木川上流から地蔵峠を越えた飯田市上村の程野にかけては、蛇紋岩が中央構造線に切られています。地蔵峠の南側の国道152号は未開通ですが、代替の飯田市道の地蔵峠付近では、地すべりによる路肩の滑落が頻繁に発生します。大鹿村大沢や上村の蛇洞沢では蛇紋岩の大規模な地すべりが生じています。

写真2 上青木かんらん岩体が小渋断層の断層谷に切られた鳶ケ巣の崩壊地 (写真:河本和朗)
写真2 上青木かんらん岩体が小渋断層の断層谷に切られた鳶ケ巣の崩壊地 (写真:河本和朗)

 図2の地質図で、戸台構造線と仏像構造線の間は秩父帯です。

 淡褐色は泥岩(千枚岩)、オレンジ色はチャート、青色は石灰岩、緑色は緑色岩です。秩父帯の泥岩も地すべりを起こします。

写真3 地すべり跡の斜面に発達した釜沢集落 (写真:河本和朗)
写真3 地すべり跡の斜面に発達した釜沢集落 (写真:河本和朗)

 写真3は大鹿村釜沢集落です。釜沢集落は、小渋断層谷に北東から合流する小河内沢の合流点に面した、地すべり跡の南向き斜面の高所にあります。写真中央の谷が小河内沢で、正面奥に赤石山脈主稜線の烏帽子岳~小河内岳が見えています。写真右の山は小渋断層谷と小河内沢を隔てる除山(のぞきやま)で、その右下方の写真の範囲外に合流点があります。合流点付近でJR東海は、除山の下へ向かって水平ボーリングを行おうとしていました。