PR

ハコモノだけで中身なし

 こうした不信感を払拭(ふっしょく)するためか、基本計画では第1章で経緯を説明している。要約すると以下の通りだ。

 まず、07年2月に「文化芸術の振興に関する基本的な方針」が閣議決定され、メディア芸術の国際的な拠点形成の検討が重点的に取り組む事項として掲げられた。次に、文化庁は08年7月、「メディア芸術の国際的な拠点の整備に関する検討会」を設置。同検討会は09年4月、国際的な拠点の整備に関する基本構想をまとめた。この基本構想に基づいて、09年5月に成立した補正予算で、センターの設立に必要な経費が計上された――。

 この説明を読むと、文化庁は数年前から時間をかけて施設の計画を練り上げていたように感じる。しかし、補正予算成立後の09年7月から始まった設立準備委員会の議論で明らかになったのは、あまりにも稚拙な計画の内容だった。

 例えば、ある委員は「展示品の収集などに掛かる費用が見えてこないのは問題だ」と指摘。「十分な運営費が確保できなければ、ハコモノだけで中身がなくなる」という意見もあった。「いつまでに予算を執行して施設をつくらなければならないのか。スケジュールを柔軟にできないのか」と計画の熟考を求める声も上がった。さらに、「『メディア芸術』のきちんとした定義が必要だ」と苦言を呈する委員もいた。

 これらの議論からは、なぜ117億円を投じて施設をつくる必要があるのか、施設でどのような事業展開を想定しているのかといった計画の具体像があまり見えてこない。補正予算の目的が景気対策だったとしても、同センターの事業を巡って「ハコモノ行政」だと批判されても仕方がないだろう。

 2016年の五輪開催を心待ちにしていた東京の関係者と同じように、センターを核とした国際イベントの開催や人材育成といった業界の活性化を待ち望んでいた関係者は少なくなかったはずだ。彼らの期待を裏切った文化庁には反省を求めたい。