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2450億~3600億円を誰がどう負担するのか

 事業費と費用負担については今後、検討を深めていく。事業費は、ケースによって2450億~3600億円と算出している。どのように負担するのかが、大きな課題となる。

 連続立体交差化と複々線化では、費用負担の考え方が異なる。

 連続立体交差化の費用は、主に国と自治体が負担する。道路特定財源を使い、街づくりの一環として事業を進める。踏み切りがなくなることで道路の渋滞を解消できるほか、線路で分断された市街地を面としてつなげられる。鉄道事業者も一部を負担するものの、受益の範囲内だけでよい。

 複々線化の費用は、基本的に鉄道事業者がほぼすべてを負担する。ほとんどのケースで混雑の緩和を目的とすることから、複々線化しても乗客数が2倍までは増えない。負担が重く、運賃がかつて認可制だったこともあり、都市鉄道の混雑は改善がなかなか進まなかった。

 そこで設けられたのが、86年施行の「特定都市鉄道整備促進特別措置法」(特々法)による積み立て制度だ。輸送力増強のための事業費を、利用者から前借りする形で運賃を値上げして積み立てる。事業終了後は運賃値下げなどの形で利用者に還元する。東京急行電鉄(東急電鉄)や東武鉄道をはじめとして、多くの私鉄がこの制度で複々線化を進めた。運賃の上乗せは10~20円で済んだ。制度の適用は複々線化でなくても受けられた。京王電鉄の場合は列車の長編成化を進めた。

 ただし、適用を受けるには、工事費が1年間の運賃収入以上の事業である必要があった。JR東日本のように経営規模が大きい鉄道事業者にとってみれば、適用を受けられるほどの大規模工事が存在しない。事実上、制度を利用できなかった。また、05年の税制改革で特々法は新規認定が事実上、終了している。

 その05年に「都市鉄道等利便増進法」が施行した。乗り換えの解消や列車の速達化など利用者が便利になる事業に対して、国と自治体がそれぞれ事業費の3分の1を補助する。鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)か第三セクターが整備主体となり、残り3分の1を調達のうえ建設する。完成後は整備主体が鉄道事業者に施設を貸し出す。鉄道事業者にとっては初期投資を抑えられるメリットがある。

 この制度を使って事業を進めているのが相模鉄道だ。相鉄本線の西谷駅からJR東海道貨物線の羽沢駅を経由して東急東横線の日吉駅まで、約13kmの連絡線を建設する(神奈川東部方面線)。2015年にJR湘南新宿ラインの新宿方面へ、2019年には東急東横線へ直通運転を実施する予定だ。

 ただし、鉄道事業者は利用料を払い続けても、自社の資産にはならない。数十年単位でみると、自社で建設した場合よりも多くの費用をかけることになる可能性がある。