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利用者の一部負担も必要ではないか

 調査報告書からは、費用便益比が1を大きく超え、意義のある事業であることが確認できる。しかしJR東日本にしてみると、投資しても見合う増収が期待できない。私鉄の場合は、沿線の宅地開発とセットで鉄道事業を進めるケースが多い。「JRは会社の生い立ちが異なる」(JR東日本の関口課長)ので、今から私鉄と同様の手法をとることは容易ではない。国や自治体の財政は逼迫(ひっぱく)しており、利便増進法による税金の投入も一筋縄ではいかないだろう。

 現行の制度の延長では、費用負担を巡ってJR東日本と自治体とで膠(こう)着状態が続く可能性がある。地元が複々線化を強く望むのであれば、新たな手法が必要だ。

 利用者にも費用の一部を負担してもらう手法を検討してはどうだろうか。特々法を使った複々線化事業では、運賃値上げに対する大きな反対運動はなかった。専門委員会で座長を務めた岩倉教授は、「当時の私鉄各社は完成予想図を駅に掲示するなどして、利用者に対して運賃値上げへの理解を求めていた。JRでは通勤ライナーやグリーン車など数百円の別料金が必要なサービスに需要がある。快適な通勤のための10円程度の値上げなら、理解が得られるのではないか」と指摘する。

 値上げを検討する際には、定期券の高い割引率を圧縮するなどの策も必要だろう。自由競争経済下の需給関係からすれば、本来なら通勤ラッシュ時には割増料金を徴収してもよいくらいだ。なのに実際には、割安料金の乗客が多い。JR東日本は民営化以降、消費税導入時と税率アップ時を除き、運賃を値上げしていない。例えば新宿-八王子間の6カ月定期運賃は6万6530円と、併走する京王線よりも4700円安くなっている。交通費は企業が社員に支給することが多いので、企業の理解も欠かせない。

 通勤手段の「安かろう悪かろう」を脱却したいと強く望むのであれば、受益者側にも相応の負担が必要だろう。