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 気象庁が作成した「震度階級」の解説パンフレットを見ながらこの原稿を書いている。震度7の説明の部分には、わずかにひびの入った木造住宅のイラストとともに「耐震性の高い木造住宅でも、まれに傾くことがある」と書いてある。

 気象庁の担当者に確認したところ、「耐震性の高い」とは現行の耐震基準、いわゆる新耐震を満たしたものであり、「まれに」とは、きわめて少なく、めったにないとの意味だという。

 要約すると「新耐震基準を満たす木造住宅は震度7の地震に遭遇しても、傾くなどの被害を受けることはめったにない」ということになる。パンフレットを見た多くの人は、そう考えて安心するだろう。

 ところがE―ディフェンス(防災科学技術研究所・兵庫耐震工学研究センター)で2009年10月27日に行われた実大振動実験では、現行の耐震基準の1.44倍の強度をもつ「耐震等級2」の3階建て木造住宅が「震度6強」の揺れで倒壊した。なぜ、こんなつじつまの合わないことが起こったのか。

 実験に使った地震波は建築基準法で想定する地震波を約1.8倍に増幅したものだったという。ここで素朴な疑問が生じる。震度7に耐えるような建物をつくるために使う地震波を1.8倍したものが、なぜ震度6強なのか?建築基準法で想定する地震波とは何なのか――

 実は現行の震度階級表記と耐震設計基準は連動していない格好になっている。あえて建築基準法で想定する「数百年の一度の確率で発生する地震波」を震度階級に当てはめると、震度6弱以下程度になるという。

 気象庁はこれまでの地震被害の調査結果から、パンフレットにあるような記述を採用している。国土交通省の住宅部局は阪神大震災による建物被害の調査の結果から、現行の耐震基準の見直しは必要ないと判断。最新の技術解説書からは震度との関連を削除している。

 それぞれが独自の判断で進んだ結果、食い違いが生じてしまっている可能性が高い。こんな状況下で最も苦労するのは消費者に向き合う家づくりの現場である。ここで問題になっているのは国民の命に直結する建物の安全にかかわることだ。顕在化した矛盾の解消に向け、早急に一歩を踏み出すべきだろう。