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 割れない前提で使っている「倍強度ガラス」が割れて落下した三菱商事ビルの2009年の事故は、高層ビルの外装にガラスを使うことの危険性を改めて認識させるものだ。このほど原因が「ガラス内の不純物の膨張」と特定された。倍強度ガラスを高層ビルの外装に使っても大丈夫なのか――。これまでに分かったことを整理する。

 高層ビルの外装に倍強度ガラスが適しているといわれる主な理由は、二つある。一つは、普通板ガラスの2倍の耐風圧強度があること。高層部の強風にも耐えられる。もう一つは、割れたときの破片が普通板ガラスと同じように細かくならないこと。サッシやカーテンウオールの枠から脱落しにくい。

 耐風圧強度の高いガラスとしては、強化ガラスもある。耐風圧強度については倍強度ガラスよりも高い。だが、割れると破片が粉々になるため、高層ビルには向いていない。

 強化ガラスが高層ビルの外装に向いていない理由がもう一つある。外力が加わっていない状態で不意に割れることがあるという点だ。旭硝子が取り扱う強化ガラス「ミストロンエース」のウェブサイトを見ると、「表面に付いた傷や、不純物に起因する傷が成長した場合に、外力が加わっていない状態で不意に破損する場合があります」との説明がある。

 倍強度ガラスでは、こうした現象が起きないと考えられていた。ところが、三菱商事ビルでは、倍強度ガラスであるにもかかわらず、自然に割れる現象が発生した。04年に起きた新潟の朱鷺メッセ・万代島ビルのガラス落下事故でも、倍強度ガラスが割れて落下している。

 いずれも海外の製品であったため、海外製品の安全性を指摘する声がある。しかし、外力が加わらなくても突然割れる現象は、国産の倍強度ガラスでも起きるようだ。

 旭硝子の倍強度ガラス「HSライト」のウェブサイトには「不純物に起因する傷が成長した場合、理論上外力が加わっていない状態で不意に破損する可能性があります」と注意を促している。日本板硝子の倍強度ガラス「HS200」のウェブサイトでも「不意の破損が起こることがあります」と書かれている。

 強化ガラスと倍強度ガラスは、製造過程が似ている。どちらも、普通の板ガラスを炉で熱した後、急冷する。その結果、ガラスの表面層に圧縮応力が生じ、内部には引っ張り応力が生じている。この状態で、ガラス内部に傷や不純物の膨張が生じると、外力が加わらなくても自然に割れる可能性があるという。

 旭硝子のウェブサイトには、対策の一例まで記されている。「確実に破片の落下を防ぎたい部位には、合わせガラスでのご採用など設計上のご検討をお願いします」。2枚のガラスを樹脂フィルムで接着する合わせガラスにすれば、2枚のガラスが同時に割れる確率はきわめて低いので、脱落することはないという考えに基づく。

 ビル設計者や施工者は、こうした注意をどこまで意識しているのだろうか。自然に割れる可能性が本当にあるのなら、割れても脱落しないように対策する必要がある。それがなされていないビルは危険だ。関係者はすぐに対策を取る必要がある。