PR

 ケンプラッツに登録している建築実務者を対象としたアンケートで、新築を手掛けた住宅の建て主がリフォームを他社に依頼したことはあるかと尋ねた。結果は下の円グラフの通り。回答者の39.7%が「ある」と回答した。「わからない」の24.0%も、建て主との関係断絶を認めたに等しいから、リフォームの仕事を他社に持っていかれた可能性は高いだろう。

(資料:日経ホームビルダー)
(資料:日経ホームビルダー)

 新築後に疎遠になっていた建て主の心変わりは仕方がないかもしれないが、定期点検や修繕などのアフターサービスを続けていながら他社に逃げられる場合もある。そうなったケースなどについて、低価格が売り物の他社に奪われたとコメントする回答者が多かった。

(資料:日経ホームビルダー)
(資料:日経ホームビルダー)

 ただ、新築時の顧客をリフォーム段階までキープできなかった工務店や設計事務所などは、自社に価格競争力以外の弱点がなかったか、冷静に検証してみることも必要だろう。下の棒グラフが示すように、リフォームの依頼主にとって価格は依頼先を評価するうえで重要な要素ではあるが、飛び抜けて重要というわけでもない。

リフォーム依頼主が重視すると想定した項目はどれかと建築実務者に聞いた結果と、過去3年以内に自宅をリフォームした消費者に対するアンケートの結果をまとめたグラフ。消費者に対しては、リフォームの依頼先を評価するうえで重視した項目を尋ねた(資料:日経ホームビルダー)
リフォーム依頼主が重視すると想定した項目はどれかと建築実務者に聞いた結果と、過去3年以内に自宅をリフォームした消費者に対するアンケートの結果をまとめたグラフ。消費者に対しては、リフォームの依頼先を評価するうえで重視した項目を尋ねた(資料:日経ホームビルダー)

 建築実務者の回答のなかには、新築時につくった玄関ドアをリフォームで取り替えられて残念がるものがあった。つくり手としての思い入れが引き渡し後も持続するのは無理のないことだが、リフォームしたい住まい手にとっては、そうした思い入れはかえって敬遠の対象になった可能性もある。新築時の状態をいつまで維持するかの決定権を握っているのは、基本的にはあくまでも住まい手側だ。

 住宅建設は新築後の引き渡しでは完了せず、リフォームや増改築によって長年にわたり継続するもの――。こうした考え方を持つことが、新築時の顧客をリフォームで“浮気”させないために必要なのかもしれない。

調査概要
・ケンプラッツに登録し、リフォームの実務経験がある建築実務者229人に対して、リフォームの実務に関するアンケートをインターネットで行った。実施の時期は2010年7月下旬で、日経BPコンサルティングの協力を得た。
・調査会社のメディアパークに登録している消費者から、過去3年以内に自宅をリフォームした300人を抽出。「10万円~50万円未満」から「1000万円以上」までの6通りのリフォームの各価格帯に、約50人ずつの回答者を確保できるよう調整した。
 そのうえで2010年7月上旬から中旬にかけてインターネットでアンケートを実施。回答者の78.7%は戸建てかテラスハウスの、残りの21.3%はマンションのいずれも持ち家に住み、過去3年以内にリフォームを依頼した経験を持っている。