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 “菅か小沢か”で民主党を二分した先の党首選。選挙戦の最中に新聞社や通信社が行った無作為抽出方式の世論調査と、ウェブの動画サイトなどが行った視聴者参加型の同時進行のアンケート調査では、どちらを支持するかで“真逆”の結果が相次いだ。ウェブ上のアンケート調査では参加回答者の嗜好が強く働きがちだが、世の中に広く知られた事象を題材にした世論調査でここまで極端な差が出たのは初めてだったような気がする。単にエンタテインメントの範ちゅうだというなら問題はないが、世論調査的な意味合いを持たせるのだとしたら、ウェブ上のアンケート調査の妥当性や信頼性については、あらためて十分な検証が必要だろう。

 それはさておき、9月14日の国会議員投票の直前に菅直人首相が行った演説が気になっている。
「私は、みなさんの力と可能性を信じます。みなさんは多くの経験を積まれ、それぞれの背景と、得意分野をお持ちになっています。わが党の中には会社員から経営者まで、そして、公務員、知事、市町村長経験者、地方議会、国内外の議員、議会スタッフ、議員秘書、政党職員、労働組合、シンクタンク、金融機関……」
というように、延々と民主党国会議員の職業や資格(元を含む)を50余り羅列した。
「多種多彩な議員の集まりこそが民主党の強みであり、財産であると自負している」という主張のための列挙だが、冗長さ、緩慢さは否めない。ネット上にはダラダラと続いた演説にあきれはてた批判的な感想があふれている。

 しかし、この演説にはもう少し深読みが必要なのではないか。演説が行われたタイミングこそ問題であり、それを抜きにしてこの演説の意味はない。演説は民主党国会議員の投票直前に行われており、主たる対象は国民ではなく、投票権を持つ議員たちだ。そう考えれば、演説のターゲットは、菅氏と小沢氏のどちらに投票するか最後まで迷っていた議員か、既に支持を明らかにしながら寝返りを画策していた議員に絞られる。

 表面上はだれも異を唱えられない“挙党一致”や“全員参加”を訴えつつ、迷える議員たちへの直接的なメッセージも裏に込めたい。ただ、TV中継されているから彼らの名前を具体的に出して露骨に勧誘するわけにはいかない。“票読みではこちらが勝っている。勝ち馬に乗ったほうがいい”とほのめかしたら品性を疑われる。あれやこれや考えた末の苦心の策が、あの職業や資格の羅列ではなかったか。