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 「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」と「東京都環境確保条例」の改正で、オフィスも省エネ対応が迫られている。そのためもあってか、日本のオフィスではいま一つ普及してこなかったタスク・アンビエント照明(以下TAL)への関心も、少しずつ高まりつつあるようだ。

 TALとは、室内が暗すぎない程度に全体照明(アンビエント照明)を抑えて、作業に必要な照明(タスク照明)をスタンドなど手元の照明で確保する照明手法のこと。オフィスワーカーが離席するときに、自席のタスク照明をこまめに消灯すれば省エネ効果は大きい。今年に入って、三菱地所やNTTファシリティーズなどが“実証実験オフィス”を運用し始めた。建設中の清水建設の新本社では、TALを本格採用する(ページ下部「関連記事」参照)。

 このTALの省エネ効果をさらに高める手法が、今年8月に開催された電気設備学会全国大会で論文発表された。「空間の明るさ感を考慮した視環境構築に関する研究〔その10〕 -明るさ感を向上させる設計技法の検討-」(中尾理沙、海宝幸一、本間睦朗、滝澤総、原耕一郎、澤村晋次、上野大輔、渡邊健一〔日建設計〕、篠田博之、山口秀樹〔立命館大〕、岩井彌〔パナソニック電工〕)である。

 TALでは、作業のための明るさはタスク照明で確保する。このため、オフィスワーカーが感じる空間全体の「明るさ感」さえ保てれば、アンビエント照明による机上面照度は下がってもよいといえる。

 人が感じる空間の「明るさ感」は、光源からの直接光と、床、壁、天井などへの反射光が、どのくらい視野に存在するかで決まってくる。そこで、オフィス空間の天井から反射率の高い布をつり下げて、視野に入ってくる反射光の量を増やせば、同じ光源から同じ光量で空間を照らした場合でも、人が感じる明るさ感は増すのではないか――。

 こうした考え方に基づいて実際に室内に布をつり下げて実験を行った結果が、この論文には書かれている。実験では、「Feu(フー)」と呼ばれる空間の明るさ感を示す指標を用いて、その値を測定した。Feuは、立命館大学篠田博之教授が開発した手法を活用した、パナソニック電工の独自指標だ。

 さて、実験の結果はどうだったのか。詳細は略すが、布をつり下げた方が明るさ感が増したという。つまり、このような手法を用いれば、アンビエント照明の照度を落としても(電力消費量を減らしても)、空間の「明るさ感」を保つことが可能になるということだ。実際のオフィスで応用するなら、布の使い方次第では、省エネ効果を高めるだけでなく見た目にも面白いオフィス空間ができそうだ。

 TALは、それぞれのオフィスワーカーが、自分にとって快適な視環境を自分で調整できる。その結果として生産性の向上も期待できる。省エネに関する規制が発端となってTALが普及していくことになれば、地球環境だけでなく、オフィスワーカーの執務環境にもよい影響をもたらすことになる。まさに一石二鳥である。初期投資が増加するなどの課題はあるが、TALはもっと普及してもよいのではないか。