PR

実際の建築物を展覧会場に組み立て、東日本大震災の被災地へ会期後に移築する。こんな試みで話題を供してくれた長谷川豪氏。建築家として独立して7年。個性を前面に出した作風を持たない住宅の設計には、毎回違った味がある。場所の特性を引き出し、建て主の喜びを最大化する。

長谷川豪建築設計事務所の長谷川豪氏(写真:柳生 貴也)
長谷川豪建築設計事務所の長谷川豪氏(写真:柳生 貴也)
[画像のクリックで拡大表示]

 3月後半まで、東京・乃木坂のTOTOギャラリー・間で開催された長谷川豪展「スタディとリアル」。個人の展示としては同ギャラリー史上、最年少だ。注目を集めたのが、中庭に組み上げられた「石巻の鐘楼」。実物大でつくられたこの鐘楼は、会期後に、東日本大震災で被害を受けた宮城県石巻市内の幼稚園に移築される。

 この展覧会と並行して東京・銀座では、日本デザインセンターの移転に伴う大規模な内装プロジェクトが進む。独立から7年。建築家として決して多作とはいえないながら、デビュー作から数々の賞を受賞し、以降も1作、1作が注目を集めている。

東京・乃木坂のTOTOギャラリー・間で開催された長谷川豪展「スタディとリアル」で、中庭につくられた「石巻の鐘楼」(写真:磯 達雄)
東京・乃木坂のTOTOギャラリー・間で開催された長谷川豪展「スタディとリアル」で、中庭につくられた「石巻の鐘楼」(写真:磯 達雄)
[画像のクリックで拡大表示]
長谷川豪展で展示した「日本デザインセンター」の建築模型。この建物の8~13階のフロアの内装設計を担当した。国内最大のデザインプロダクションの新オフィス(写真:ケンプラッツ)
長谷川豪展で展示した「日本デザインセンター」の建築模型。この建物の8~13階のフロアの内装設計を担当した。国内最大のデザインプロダクションの新オフィス(写真:ケンプラッツ)
[画像のクリックで拡大表示]
「日本デザインセンター」13階の完成予想モンタージュ。最上階の13階はワンフロアを丸ごと余白として残し、自由に使える空間として提案した(写真:長谷川豪建築設計事務所)
「日本デザインセンター」13階の完成予想モンタージュ。最上階の13階はワンフロアを丸ごと余白として残し、自由に使える空間として提案した(写真:長谷川豪建築設計事務所)
[画像のクリックで拡大表示]

 長谷川豪氏が設計する建築は、作品全体をひと言ではくくりにくい。確かに、ディテールや開口の重ね方に長谷川氏らしさを垣間見ることはできるが、「それは手癖に過ぎない」ときっぱり。共通するのは、ある信条だけだ。

 「設計コンセプトが、クライアントや敷地を覆い尽くしてしまうことは好ましくない。それは建築家の病であって、本質的な問題ではないと思う。僕の目的は、クライアントの喜びと、その敷地で楽しめる最大の方法を、ひたすら検討して提案すること」(長谷川氏)。

 極端にピロティを高くすることで周囲の木々と連続した半屋外空間をつくり出した「森のピロティ」、周辺に3階建て住宅が建ち並ぶなか、あえて4階建てにし、各床にうがった穴によって空間を立体的につなぎ合わせた「浅草の町家」(ともに2010年)。そして「日本デザインセンター」(12年)の内装では各フロアを敷地と捉え直し、床を上げたり奥行きを変えたりすることで、部屋という環境をチューニングし直そうと試みる。長谷川氏にとって、導き出される形態や構造、素材が毎回ガラリと異なるのは必然のことだ。

「森のピロティ」(2010年)。北軽井沢に位置する週末住宅で、周囲の木々が壁のように囲む高さ約6.5mのピロティを持つ。住宅内からは濃い緑の眺望が広がる(写真:長谷川豪建築設計事務所)
「森のピロティ」(2010年)。北軽井沢に位置する週末住宅で、周囲の木々が壁のように囲む高さ約6.5mのピロティを持つ。住宅内からは濃い緑の眺望が広がる(写真:長谷川豪建築設計事務所)
[画像のクリックで拡大表示]
「浅草の町家」(2010年)。東京・浅草に建つRC造の住宅。高さが9mに限られ、周囲には3階建ての住宅が多く見られるなか、床の開口をずらして重ねながら4層の空間を生み出した(写真:長谷川豪建築設計事務所)
「浅草の町家」(2010年)。東京・浅草に建つRC造の住宅。高さが9mに限られ、周囲には3階建ての住宅が多く見られるなか、床の開口をずらして重ねながら4層の空間を生み出した(写真:長谷川豪建築設計事務所)
[画像のクリックで拡大表示]