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一風変わった設計コンペが進行中だ。大卒の社員を職人に育成することで有名な平成建設(本社:静岡県沼津市)が、都内の拠点となる世田谷支店を開設するに当たり、実施を前提に学生から設計案を募るコンペを実施。今度は建築家の育成に乗り出した。4月中旬には一次審査を通過した学生を対象に、本社で審査員がエスキスを行った。

 「第一回平成建設学生設計提案競技」は、提案が実現することを前提とした、学生コンペとしては珍しい試みだ。最優秀賞に選ばれた学生たちは、平成建設の設計部と協働する形で実施設計にも参加する。審査員およびアドバイザーを務めるのは、ともに建築家の富永讓氏、藤原徹平氏、長谷川豪氏の3人。審査途中で審査員と学生の交流の場を設けているのも特徴のひとつだ。

 教育的に意義のある企画として、平成建設の秋元久雄社長、設計部の社員も積極的に参加する。「職人を育てている会社でもあるので、人材を大切にしている。そういう意味も込めて、学生にこのような場を提供したら面白いのではないかと思った。これは『お祭り』。絶対に学生の面白さが出てくるはず。そこに期待したい」と秋元社長は話す。

秋元久雄社長の話を聞く山下真一郎氏(武蔵野美術大学4年)、宇佐美喜一郎氏(東京理科大学二部3年)、田中裕大氏(武蔵野美術大学4年)の3人(写真:大家 健史)
秋元久雄社長の話を聞く山下真一郎氏(武蔵野美術大学4年)、宇佐美喜一郎氏(東京理科大学二部3年)、田中裕大氏(武蔵野美術大学4年)の3人(写真:大家 健史)

エスキスのため全国各地から学生が集結

 2011年11月から募集を開始し、「つながる場所―○○をつなぐオフィス―」をテーマに、平成建設の都心の旗艦店にふさわしいオフィスの提案を求めた。全国から413組のエントリーがあり、そのうち168組(計509人)の実応募の中から、2012年3月22日に一次審査を行い、11組(計32人)の通過作品を選出した。

 4月14日には、一次審査を通過した学生11組が全国から平成建設の沼津本社に集まり、二次審査に向けたブラッシュアップのためのエスキスを行った。各学生チームのブースを設け、審査員が訪ねる形で、それぞれのチームと個別に面談。学生たちは図面や模型などを持ち寄り、それぞれの提案をアピールした。

富永譲氏のエスキス風景。左はともに京都工芸繊維大学4年の差尾孝裕氏と廣田剛氏。平成建設沼津本社のショールームを利用してエスキスが行われた(写真:大家 健史)
富永譲氏のエスキス風景。左はともに京都工芸繊維大学4年の差尾孝裕氏と廣田剛氏。平成建設沼津本社のショールームを利用してエスキスが行われた(写真:大家 健史)

藤原徹平氏のエスキス風景。左は大阪工業大学修士1年の石川慎也氏と延安章吾氏(写真:大家 健史)
藤原徹平氏のエスキス風景。左は大阪工業大学修士1年の石川慎也氏と延安章吾氏(写真:大家 健史)

 全国各地から様々な大学の学生が参加したが、なかでもユニークな集まりが東京伍人(トーキョーファイブ)だ。東京大学や東京工業大学、東京芸術大学、東京理科大学の修士課程に在籍する大学院生5人が、インターネット上の多岐にわたるツールを駆使して情報を共有。遠隔地にいるメンバー同士で共同作業を行った。

 「もともと共通の友人だったが、このコンペに対して関心を持っていることをツイッター上でつぶやいたら、みんなが集まってきた。作業はフェイスブックやドロップボックスを使って行っている」とメンバーの中村義人氏(東京工業大学修士2年)は話す。ドイツのミュンヘン工科大学に留学中の石原隆裕氏(東京大学修士2年)もドイツからコンペに参加。14日のエスキスでは、インターネットを使ってドイツと沼津を中継した。