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 大阪府建築士会が主催する「第58 回大阪建築コンクール」で渡辺節賞に輝いたのはSPACESPACEの香川貴範氏と岸上純子氏。対象作は大阪府門真市に建つ単身者用の賃貸集合住宅「Dアパートメント(CASA 小治郎)」だ。同賞は、大阪府建築士会の初代会長である故渡辺節の名前を冠した新人賞で、第24 回に創設された。

SPACESPACE(大阪市北区)代表の香川貴範氏。パートナーの岸上純子氏と連名で、Dアパートメント(CASA 小治郎)で2012年5月に第58回大阪建築コンクールの渡辺節賞を受賞(写真:ケンプラッツ)
SPACESPACE(大阪市北区)代表の香川貴範氏。パートナーの岸上純子氏と連名で、Dアパートメント(CASA 小治郎)で2012年5月に第58回大阪建築コンクールの渡辺節賞を受賞(写真:ケンプラッツ)

 今回の審査委員長である小玉祐一郎氏(神戸芸術工科大学教授)は総評の中で、「荒削りではあるがコンセプトを具体化する空間構成手法は新しい力を感じさせる」と述べ、票が割れた3作の中で「もっとも意欲的で実験的な試みをしており、渡辺節賞にふさわしいと評価された」と結んでいる。同賞を受賞した香川氏に聞いた。

――渡辺節賞をどのような賞だと理解していますか。また受賞後の反響はいかがですか。

香川 大学時代は東京で学びましたが、東京では若手建築家の登竜門として東京建築士会の住宅建築賞があることを見聞きしていました。大阪の坂倉建築研究所に入所して、そのまま大阪で独立し、渡辺節賞を知ったのは割と最近のことです。大阪府建築士会の賞を調べていて渡辺節賞があることを発見しました。

 渡辺節が設計した建築はいくつか知っていて、名が通った建築家であることも理解していました。関西で活動する僕らの少し上の世代の建築家も同賞を取っています。東京の人はあまり知らないけど、関西の人は皆、知っていて受賞後、それなりの反響はありました。ツイッターやフェイスブックでお祝いのメッセージをいただきました。審査員である構造家の満田衛資さんからは「賞を取ったからといって仕事が増えるわけじゃないみたいですよ」と教えてもらいましたが(笑)。

 ただ、ウェブサイトをたどっていっても過去数年の受賞作しか分かりません。しかし、受賞後に士会からもらった資料で、もう30人以上が同賞をもらっていることを知り、重みのある賞だと理解しました。過去の受賞作をぜひ、ウェブサイトに載せてほしいですね。

Dアパートメント(CASA 小治郎)の外観を南東から見る(写真:鳥村 鋼一)
Dアパートメント(CASA 小治郎)の外観を南東から見る(写真:鳥村 鋼一)

――受賞作の特徴は細長い平面を曲げることで、ワンルームながら複数の部屋からなるような賃貸集合住宅の住戸プランを生み出したことです。こうした平面が生まれるまで、時間はかかったのですか。

香川 戸建て住宅と同じ程度の期間で設計はまとめました。延べ面積は約230m2と、大き目の戸建て住宅の規模ですから。基本設計に3カ月、実施設計に3カ月それぞれかけました。アパートは転勤時期に合わせて2月や9月に完成させる場合が多く、ここでは9月完成を目指していました。しかし、見積もりが終わった時点で東日本大震災が発生し、材料の流通が止まってしまった。そのため、着工が2カ月遅れました。

 実はこのプランになる前に敷地の大きさが変わっています。蔵を壊す予定だったので最初は敷地面積が2倍くらいありました。建て主の母親が蔵を壊したくないと言い出し、敷地が半分になりました。そのため、当初のプランとはガラッと変えました。

 そもそも敷地が狭くなり、五角形の変形敷地となったので、普通に四角い建物を配置できなくなりました。敷地なりに変形した建物を置くのも唐突な感じがしました。いろいろプランを検討しているうちに、敷地形状に従うのではなくて、周りの環境に合わせたらいいのではないかと思い始めました。北側に線路が走り、南側はオープンで日差しがふんだんに入ります。また西側で接道する。この3辺を生かし、それらを滑らかにつないでいくというプランです。