PR

国際的に知られる「斉藤の方法」

 例えば、1970年1月、旧国鉄が新潟県高場山地すべりの崩壊予測時刻を的中させた。「危ない地形・地質の見極め方(上野将司著、日経BP社発行)」に詳しく記述している。その一部を抜粋する。

崩壊時期を的中した高場山地すべり

 かつての国鉄飯山線の旧高場山トンネルは、信濃川の水衝部の斜面を貫く長さ187mの短いトンネルだった。このトンネルは1970年1月22日午前1時24分、地すべりによって西半分が崩壊した。

 トンネルの変状は古くから観察されていたが、69年4月の融雪や同年8月の大雨で加速し、列車の運行をしばしば停止するほどになった。11月には大規模な地すべりが原因であることが分かった。頭部の亀裂での計測が始まり、積雪に対して計測機器を地下に埋設して遠隔で貴重な記録を取り続けた。最終的に地すべり変位は急速に増加し、13万m3の大規模な崩壊が発生した。

 これに先立ち、国鉄では崩壊発生の危険を本社と管理局で崩壊前日の17時に同時に記者発表し、さらに1時間おきに崩壊予想時刻を公表した。午前零時に発表した崩壊予想時刻は午前1時30分であり、実際の崩壊時刻との差は6分だった。当時は鉄道が重要な交通手段だったので、マスコミに注目されて大きく報道された。

電柱後方に見えるのが、旧高場山トンネルの崩壊箇所(写真:上野将司)
電柱後方に見えるのが、旧高場山トンネルの崩壊箇所(写真:上野将司)

 この地すべり崩壊時期の予測方法は、提唱した旧国鉄技術術研究所の斉藤迪孝博士にちなんで「斉藤の方法」と呼ばれる。崩壊予想時刻の的中例として「高場山地すべり」は国際的にも多くの研究者に知られ、国内では崩壊の差し迫った地すべりで「斉藤の方法」は適用実績が多い。

 「斉藤の方法」はその後も各地で、何度も崩壊予測を的中し、被害を最小限に抑えた。地すべり頭部で計測した変位記録をもとに、ひずみ速度とクリープ破壊時間の関係式から崩壊時刻を予測するものだ。

 崩壊の予測はこうした理論と、日夜観測・警戒を続ける自治体職員や技術者の努力のたまものだ。浜松市天竜区での崩壊は続いており、住民もまだ避難を余儀なくされている。崩壊の早期収束とその後の恒久安全対策を望む。