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 東京都心の赤坂見附交差点を見下ろしていた「赤プリ」が、静かに姿を消した。バブル経済期を象徴する建物が、上から徐々に縮んでいく様子は、当時を知る世代には哀愁すら漂う都市の新たなシーンとして感慨深いものがあったはずだ。

縮み行く赤プリ。左から2012年12月中旬、13年1月中旬、13年3月下旬に撮影(写真:日経アーキテクチュア)
縮み行く赤プリ。左から2012年12月中旬、13年1月中旬、13年3月下旬に撮影(写真:日経アーキテクチュア)

 解体工事を手掛けたのは大成建設・西武建設JV(共同企業体)。導入したのは大成建設が開発した「テコレップシステム」と呼ぶ工法だ。騒音や粉じんの拡散を抑えるのが特徴。超高層ビルの解体はこれまで、建物の内外にタワークレーンを立てて進めるケースが多かったが、まるで違った方法で解体してみせた。

 既存ビルの屋根を大型ジャッキで支えて蓋にして、屋上階の外周に取り付けた防音パネルとともに建物上部をすっぽりと覆う。閉鎖空間で解体を進めた後、ジャッキで下げることを繰り返す。2層分の解体と屋根のジャッキダウンにかかる1サイクルの工期はおよそ10日だ。

既存の屋根と足場で囲った建物上部の閉鎖空間。この中で解体工事を進めた(写真:大成建設)
既存の屋根と足場で囲った建物上部の閉鎖空間。この中で解体工事を進めた(写真:大成建設)

 「赤プリ」と呼ばれて親しまれた「グランドプリンスホテル赤坂」は、丹下健三氏が設計を手掛け、赤坂プリンスホテル(当時)の新館として1982年に完成した。ホテルの営業を終えたのは2011年3月。建て替えのため、2012年秋に解体を始めた。高さ約140m、地上40階建てで、国内で解体した建物としては最高の高さとなった。

 建物が高くなればなるほど、解体による騒音の拡散や粉じんの飛散、破片の落下を防ぐとともに、工事中に起こり得る地震や強風への備えが重要となる。システムは近隣の安全・安心の確保、環境への配慮、作業の効率化を同時に実現することを目指して開発された。

 工事中の消費電力削減にも意欲的に取り組んだ。目新しいのは建物内に設置した荷降ろし用のクレーンだ。解体材を地上に運ぶ際、自由落下エネルギーを利用して発電する機能を持たせた。照明や散水などほかの装置を動かすのに利用した。

 同システムを初めて採用したのは、東京・大手町にあった高さ100mの旧大手町フィナンシャルセンター。こちらは長方形の単純平面だったが、赤プリは翼を広げたようなV字形の平面を持つ。改良を重ね、複雑な形状の超高層ビルにも対応できるようにした。

 開発者の大成建設建築技術開発部の市原英樹次長は、「目立たないように美しく解体することが、長年使われてきた建物への気遣いだ」と語っている。防音パネルに設けた採光窓を建物の窓の位置と同じ横方向に配置するなど、その存在ができるだけ目立たないように工夫。不安感を周囲に与えず、赤プリのイメージを保ったままスマートに縮ませた。

 大成建設によると、国内にある高さ100m以上の超高層は700棟以上。うち100棟以上が築20年を過ぎており、天井高や耐震性能の不足、周辺の再開発などによって、建て替えが選択肢の一つとなりつつある。2020年の五輪開催に向け東京大改造の機運が高まっており、超高層ビルが解体されるケースは増えるとみられる。日本生まれの超高層解体技術は、世界中からやって来る人々にもクールに映るはずだ。