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企業、地方自治体といった経営組織のトップや働き手、その顧客、市民など建物環境を「使う側」の間で、また建築・内装の設計者など「つくる側」の間でも、ファシリティマネジメント(FM)に対する理解を共有する必要がある。まずは、その基礎知識を整理しよう。

 FMとは、ファシリティ(後述)を経営資源、経営基盤として扱い、経営組織とその事業(ビジネス)の発展のために戦略を持ってマネジメントする継続的な取り組みを指す(Aを参照)。

(資料:取材をもとに日経アーキテクチュアが作成)
(資料:取材をもとに日経アーキテクチュアが作成)

 ファシリティは、便宜的に「施設」と呼ぶ場合もある。しかし、建物や建築設備などのハード以外に、それらが生み出す様々な環境(エンヴァイロメント)、および付随するサービスなども含むので、単純に施設と表現するだけでは不足がある。経営活動の主な舞台となるわけで、それらの適切なマネジメントは他の経営資源の活用とも密接に関係する(Bを参照)。

(資料:取材をもとに日経アーキテクチュアが作成)
(資料:取材をもとに日経アーキテクチュアが作成)

 こうした経営資源のマネジメントは、第一には競争力の向上などを図って、事業を成長させることが目的になる。同時に、社会に対する責任を果たし、一社や一企業グループ、一自治体の利益を超えて地球環境配慮、地域の安全・安心の確保などに努める必要がある。そうした面でもファシリティは重要な位置付けになる。

 FM推進のポイントとしては、大きく3つを挙げることができる(Cを参照)。

(資料:取材をもとに日経アーキテクチュアが作成)
(資料:取材をもとに日経アーキテクチュアが作成)

 (1)ファシリティの規模や配置、優劣は固定資産税や賃貸料、エネルギー消費量などに直結する。そのマネジメントによって「コスト」削減の効果を見込むことができる。

 (2)ファシリティには本来、使う側に対して快適性や安全性、生産性の向上などをもたらす役割がある。そのマネジメントによって利用環境としての価値である「ホスピタリティ(もてなし)」を引き出すことができる。医療施設や商業施設はもちろん、雇用する人材に対して創造的な成果を期待するオフィスのような場所でも、それはないがしろにできない。

 (3)特定部門のスペースや施設ごとに目標を設定し、部分的な最適解とするだけでは不十分である。縦割りなどの障害を排した上で、権限を持つ部署が一社や一企業グループ、一自治体全てのファシリティを見渡し、戦略的に企画、管理、活用する「全体最適化」の観点が欠かせない。

 3つのバランスをどう取るか。目標をどう設定し、効果をどう測るかは、経営組織の理念や特性、抱える課題などによって異なる。「これからのFM(ファシリティマネジメント)を考える」からの鼎談で触れているように、コストの管理はどんな経営組織でも課題としているため、むしろ経済効果のみに偏らない観点が大切になるという声もある。

 日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)常務理事の成田一郎氏は「米国のFMはMBA(経営学修士)取得者が関わるなど経営面を重視する。一方、欧州のFMはホスピタリティあるいはサービスの観点を重視する傾向がある」と語る。「それらと比較し、日本では建築出身者が関わる場合が目立ち、ややハードに対する関心に傾いていたかもしれない。立場によって観点は違うが、どれも必要で、どれかだけが肥大化するのは望ましくない」。